« びわの花芽 | トップページ | 「往来物倶楽部」へ質問 »

2007年11月 5日 (月)

小野篁伝説

 さてちょっと話を戻して、再び小野篁です。関係ホームページを見ていくと、いろんな伝説がある人だということがわかりました。
 漢字に関することでは、前に書いた嵯峨天皇が出した謎は「子子子子子子子子子子子子」ではなく、

「一伏三仰不来待書暗降雨慕漏寝」

を読めというものだったという話もあるそうです。小野篁はこれを「月夜には来ぬ人待たる掻き曇り雨も降らなん恋ひつつも寝ん」と読んでみせた。(「一伏三仰」というのは、月夜は「一度伏し、三度仰ぎ見る」ものだから。 というものや、そのほかにも、

「二冂口月八三 中とほせ」
「木頭切月中破」

などの謎に答えたということです。
「二冂口月八三 中とほせ」は、「二冂口月八三」の真ん中に線を引けということで、答えは「市中用小斗」、「市中では小斗を用いる=市(いち)では小さな升(ます)を用いる」となる。
「木頭切月中破」は「木の頭切れて、月の中破る」で、答えは「不用」です。


 漢詩の才能が唐の白楽天に匹敵するほどだったという伝説もあります。
 やはり嵯峨天皇が、自作の詩として

閉閣只聽朝暮鼓  閣を閉じて只だ聴く 朝暮の鼓

上樓遙望往來船  楼に上りて遙かに望む 往来の船

この二句を小野篁を見せたところ、篁は、「遙」を「空」にして「楼に上りて空しく望む」としたら、もっといいでしょうと言った。
 ところがこれは、そのころ渡来したばかりで天皇が秘蔵していた『白氏文集』の「春江」という詩の一部で、「空」を「遙」に変えて、自作の詩だとして見せたものだった。小野篁の詩情は、白楽天(白居易)と同じである、と天皇は驚いた、というものです。

 そういえば、この話は、ずっと昔に聞いたことがあります。これが小野篁の話だとは覚えていませんでしたが。
 もうこれで、江戸時代の「漢字の覚え方」の先生としての資格は十分ですが、ほかにもいろいろな伝説があったのです。

------------------------------
篁は多情多感な博識の英才で自恃(じじ)するところ高く,直情径行,世俗に妥
協せぬ反骨の士であり,野狂の異名がある。

その奇才に因由する数々の話柄が《江談抄》《俊頼口伝》《今昔物語集》《宇
治拾遺物語》等に伝えられている。唐の白楽天と詩境を同じくする才幹である
ことを称揚する説話は篁を9世紀の漢風謳歌時代を代表する詩人として理想化する伝承だが,その他隠岐配流事件をめぐる和歌説話,篁を冥官とする蘇生説話などがある。なお異母妹との恋愛談や大臣の娘への求婚談から成る《篁物語》は虚構であり,その成立時期については,諸説があるが,平安中期から鎌倉初期までの間と推定される。             秋山虔 
(c) 1998 Hitachi Digital Heibonsha, All rights reserved
http://www.kuniomi.gr.jp/togen/iwai/takamura.html
------------------------------

 この中で、「篁を冥官とする蘇生説話」とは、次のようなものです。

------------------------------
篁は、毎晩冥府に通い、閻魔王庁で裁判を手伝っていた人物としても知られる。篁がまだ学生であったときに、罪を犯した。そのとき、藤原良相(よしみ)が篁のために弁護をした。歳月が流れ、篁は参議となり、良相も大臣になっていた。そのうち良相は重病となり、他界した。直ちに閻魔王の使いの者にからめ捕らえられて、王宮で罪を定められようとした。見ると、閻魔のかたわらに篁がいる。篁は閻魔に「この大臣は、正直で良い人だ。篁に免じて許してくれないか」と言う。閻魔は「篁がぜひにもと言うのならば、許してやろう」と答える。こうして良相は、生き返った。ある日、良相が内裏に行くと、篁がいた。
あのおりの閻魔王庁でのことを尋ねた。篁は「先年、私のために弁護をしてく
れたお礼をしただけ。決して人に話しなさるな」と言う。話を聞いて、良相は
ますます篁を恐れながら、「篁は普通の人間ではない。閻魔王庁の臣であった」と知った。このことは自然と世間に聞こえ、人々は、「篁は閻魔王宮の臣として冥途に通っている人だ」と恐れたという(「今昔物語集」)。 (中略)
京都の六波羅蜜寺近くの六道珍皇寺境内の閻魔堂には、閻魔大王と篁の木像が並んでいる。寺の裏には篁が冥界へ通っていたという井戸がある。篁は、この井戸から毎晩閻魔の庁へ出かけ、裁判を手伝っていたのである。そして、嵯峨の清涼寺横の薬師寺境内の井戸(生の六道)から、この世に戻って来たという。
http://www.pandaemonium.net/menu/devil/ononotak.html
------------------------------

 つまり昼間は朝廷に仕え、夜は閻魔庁に仕えていたという伝説です。忙しい人だったんですね。今なら公務員は「兼業」の届け出をしないといけません。
 そしてこの「冥官伝説」が、小野道風をしのぐ件数の関連ホームページの源となっていたのです。
 「陰陽師」安倍清明が、マンガやら小説、映画、テレビでブームになった影響だと推測しますが、安倍清明と同じく、時代オカルトもののヒーローあるいは脇役として有名になっているようです。少女マンガにも出ているのでしょうか、「小野篁サマ秘密の花園」というホームページまであって、これには驚きました。

|

« びわの花芽 | トップページ | 「往来物倶楽部」へ質問 »

声に出して覚える漢字」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 小野篁伝説:

« びわの花芽 | トップページ | 「往来物倶楽部」へ質問 »