« 小野篁伝説 | トップページ | 6 開高健のジョーク »

2007年11月10日 (土)

「往来物倶楽部」へ質問

 「巳己已巳」の謎については、もう専門家に聞くしかないと、小泉吉永という
往来物研究者の「往来物倶楽部」というホームページ(http://www.bekkoame.ne.jp/ha/a_r/indexOurai.htm)の掲示板で、質問してみました。
 以前『小野篁歌字尽』の概要を紹介したのは、このホームページからの引用で
した。「往来物」については、同じく次のような解説があります。 

------------------------------
往来物とは、主に寺子屋で使用された初歩教科書の総称です。中古・中世に作られた往来物(古往来)の多くは、貴族子弟の学習用に編まれた往復書簡(模範文)であり、手紙文の行き来(往来)の意から「○○往来」という呼称が一般化しました。近世においては書簡文の体裁をとらない初歩教科書(「実語教・童子教」等の教訓文や「御成敗式目」等の法令文など)を含めて広く「往来物(往来本)」と呼ぶようになりました。 
 http://www.bekkoame.ne.jp/ha/a_r/A11.htm
------------------------------

 わたしの質問は次の二点です。

1『小野篁歌字尽』の活字本というのは存在するのでしょうか。あるとすれば、
題名、出版社等をお教えください。
2『小野篁歌字尽』の中で、「已己巳」の字が、「巳己己巳」のように4文字に
なっているようですが、これはどういうわけでしょうか。
 江戸時代には、4文字として通用していたのでしょうか。
 また、「巳」を「すで」あるいは「つち」と読んだり、「己」を「ミ」と読ん
でいるように見えるのですが、いかがでしょうか。

 素人の質問に答えてもらえるかどうか、心配だったのですが、小泉吉永さんか
らとても丁寧な回答をいただきました。

------------------------------
(1)「小野篁歌字尽」の活字本は、下記のように類書を含めて、「日本教科書大系・往来編」七巻(講談社、昭和四七年)に活字になっています。ただし、解説は私の編著『往来物解題辞典』の方がより新しい資料に基づく正確な記述になっていますので、下記(石川松太郎先生執筆)を参考にしてください。
 また、活字版自体の誤植の可能性もありますので、きちんと調べられるのでしたら、大空社刊の「往来物大系」一六巻や「稀覯往来物集成」一一巻をあわせてご覧になるとよろしいと思います。

(2)往来物に限らず江戸時代に流布した本には、文章の一部が異なる色々な異本が生じたり、文章の前後が入れ替わるなどの異同が生じることがあります。「小野篁歌字尽」の場合には次の(イ)(ロ)の二つの系統に大別できますが、そのいずれもが「巳(*漢字の第一画と第三画が接触、第二画と第三画は接触せず* い/すでに)・已(*第二画と第三画のみ接触* こ/おのれ)・巳(*第三画が第一・二画の両方と接触しない* み)・巳(*全ての画が接触し合う* き/つち」の4文字になっています。ただし、最後に掲げた(ハ)は「巳(*全ての画が接触し合い、第一画の横棒が左に突き出る* い/すでに/おはり/やむ/はなはだ)・已(*第二画と第三画のみ接触* き/おのれ/つちのと)・巳(*全ての画が接触し合い、第三画の縦棒が上に突き出る* し/み)」の3文字ですので、これらと同様な異同が生じた結果と思われます。また、漢字の読み方や記載にもしばしば誤記が見られますように、校訂が必ずしも十分ではない写本による伝達が大半をしめていたと思われる江戸時代では、誤記や校訂不足が諸本による異同や混乱の原因になっているものと思います。

(以下、次の三系統の刊本の説明が続きますが、ちょっと長くなるので省略します)
(イ)おののたかむらうたじづくし 小野篁歌字尽(寛文二年板系統)
(ロ)おののたかむらうたじづくし 小野篁歌字尽(延宝三年板系統)
(ハ)たいぜんうたじづくし〈小野篁大増補〉大全歌字尽
------------------------------

「いやあ、インターネットって素晴らしいですね」と、言いたくなります。大学
の先生なら同僚の国文の先生にちょっと聞いてみることもできるのでしょうが、
わたしにはそんなつてはありません。それが、いとも簡単に専門家からの回答を
もらうことができました。

 「巳己已巳」についての回答は、大学時代の友人の説と同じく、誤記や校訂不
足によるものであろうとのことで、4文字通用説は認められないようです。
 そうすると、最初に「巳己已巳」の項を書いた人物が、かなりいい加減であっ
たということになります。
 
 さあ次は、活字になっているという「日本教科書大系・往来編」七巻に当たっ
てみなければなりません。

|

« 小野篁伝説 | トップページ | 6 開高健のジョーク »

声に出して覚える漢字」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「往来物倶楽部」へ質問:

« 小野篁伝説 | トップページ | 6 開高健のジョーク »