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2008年7月15日 (火)

16 ピンとこない翻訳もの

 翻訳物のジョークには注釈がないとよくわからないものがあります。こんなジョーク。

シカゴのとても流行っているある大衆食堂に出ていた表示

『当店はエミリー・ポストが気を失った店』。エミリー・ポストは、無論あの有名な行儀作法の本の著者。
(植松黎編・訳『ポケット・ジョーク22 グルメと笑い』P41)

 これはいちおうエミリー・ポストについて、有名な行儀作法の本の著者という注釈がついています。ウィキペディアによれば、アメリカの女性作家で、1922年に出版した『エチケット』がベストセラーになり、エチケットの権威として知られているそうです。日本でいえば塩月弥栄子のような人でしょうか。
 それが気を失ったというのは、よほど汚いとか、客は粗雑なあらくれ者ばかり、というようなことなのか。それを看板に出すというのは、どういう意味があるのか。エチケットなんか知ったことか、お上品ぶって食う店じゃねえ、というだけのことなのか。昔、横浜の中華街では、狭くて汚い店の方がうまいという風説がありましたが、同じような意味があるのでしょうか、わかりません。

感謝
 
「この料理のレシピー」と夕食の食卓で妻君が打ち明けた。「じつは、図書館の雑誌から切り取って来たの。いけないことをしたと思うわ」
「まあ。図書館の人はきっと怒ってるだろうが」と亭主は言った。「きみに感謝しなければならん亭主どもが何十人いるか、誰にもわからんさ」
(植松黎編・訳『ポケット・ジョーク22 グルメと笑い』P78)

 これも今ひとつピンと来ません。まあレシピがないおかげて、まずい手料理を食わされずにすむということですが、奥さんの手料理はまずいもの、という共通の前提がないとわかりません。

開拓者

 長い間、熱帯雨林の環境調査をしている独身主義の男が、仲間と四方山話をしていた。談たまたま、政治から料理に転じた。
「じつを言うと、おれは昔、料理の本てやつを一冊取り寄せたことがあるんだ」と独身主義の男が仲間に打ち明けた。「でも、どうにもできんかったよ」
「手の込んだややこしいことばかり書いてあったんだろう?」と仲間が言った。
「その通りさ!」と独身主義者は言った。「どのレシピーもみんな同じように始まってるんだ──綺麗なお皿を一枚用意します、ってな。それで、おれはあきらめたよ」
(植松黎編・訳『ポケット・ジョーク22 グルメと笑い』P178)

 これは「綺麗なお皿を一枚用意します」が「手の込んだややこしいこと」だというんでしょうが、これも日本人にはピンとこないようです。
 最後は、よくわかるやつをどうぞ。

風味

 月曜日、キリスト教の宣教師が人食い人種の村に到着した。しかし、火曜日の午後には、彼は、歴史上の人物となってしまった。
 彼の遺したもののなかに、一冊の雑誌があった。原住民のひとりが、その中に人物の写真があるのをみつけ、人間が写っている部分を破いて、一呑みに呑くだした。
 それを見て、仲間がたずねた。
「どうだね、乾かしたやつ味は?」
(植松黎編・訳『ポケット・ジョーク22 グルメと笑い』P185)

 人食い人種もののジョークもいろいろありますが、最近のPC=ポリティカル・コレクトの風潮からだんだんすたれていくのでしょうか。「本」が出てくるジョークはほとんどありませんが。

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