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2008年7月 3日 (木)

こぐこぐ自転車

 二月に自転車を買いました。使っていたママチャリがこわれてしまったからですが、ちょうど買い換えを楽しみに待っていたところでもありました。というのは、『こぐこぐ自転車』(伊藤礼、平凡社、2005)という本を読んで、今度買うときにはこれにしたいと思っていた自転車があったのです。

S

 『こぐこぐ自転車』というのは、まもなく古希で定年退職という大学教授が突然自転車に目覚め、同じような年齢の仲間たちと、房州、碓氷峠、はては北海道へとツーリングに出かけていくという話で、旅の様子や自転車についての蘊蓄があれこれ語られる。
 文章がいい。著者は作家の伊藤整の子供で、『チャタレイ夫人の恋人』完訳版の訳者でもある。ところどころ皮肉もきかせながら、さりげない書き方ですっとぼけた味のユーモアがにじみ出ている。
 例えば自転車を買ったときの話。自転車雑誌やカタログなどを三カ月にわたって検討し、二十万円のこれこれの自転車を買おうという魂胆を秘めながら自転車店にやってきた著者は、

 それから私はなんとなくお店を見たくて来たのであって、とくに何かを買いに来たのではないというふりをした。最初からこれこれこういう自転車を買いたくて来たのだと言うのはお互い気疲れをするものであるからだ。これこれこういう自転車が欲しくてたまらない、というような気分を横溢させて店に飛び込むというようなことは控えなければいけないのだ。買うことになるにしても、なんとなく買うはめになったとか、すごく気に入ったものを偶然見つけたら嬉しくなってつい買ってしまった、という形にしたいのである。最初から計画的に何かをほしがるというのは下品なのである。どんなに欲しくても歯を食いしばって顔や態度には出さないというのが望ましかった。(P208)

 そして、ほしい自転車の名前をはっきり言わないままに、店の小僧にすすめられた他のメーカーの十六万円のマウンテンバイクを買ってしまう。しかし、この自転車はいい自転車だったようで著者は満足したのであるが、この話にはこんな落ちもついている。
  出かけた先でパンクを直してもらった自転車屋から

 「だけどね、あんた、なんだってこんな自転車を買ったんだい」。私が自転車にまたがって走り出そうとしたとき、彼は言うのだった。
  「そういうのは高校生が乗る自転車だぜ」

  古希をすぎて、この赤と黄色だんだらの「茹であげた上げたタラバ蟹の脚」のような自転車で四国を走ってきたという著者に敬意を表し、わたしも自転車がほしくなった。むろん何十万もする自転車などとても買えないし、碓氷峠も箱根の山も手におえそうにない。ほしくなったのは、著者が四台目に買ったという普通の主婦用自転車である。
  宮田工業のこの「クオーツXLα」は、通常二十キログラム前後の重量がなんと九.九キログラムという超軽量で、しかも値段は四万円だという。それに著者はこうまで書いている。

  極端なことを言うと、宮田工業はこんな自転車が作れるのならこれ以外の自転車を作る必要はない、と思うくらいである。軽いから発進に苦労しない。内装三段の変速機がついているから都内の坂道ぐらいなら不便は感じない。また当然のことながら、なによりも私の三台の折り畳みに較べると、格段に乗り心地がいい。安定している。Quartz XL αにまたがると、これなら下関ぐらいまでなら平気で行ってしまうな、と自然に考えてしまう。(P190)

 これはほしくなりますね。そこへ持ってきて、おあつらえ向きにママチャリがこわれてしまいました。(わざとこわしたりはしていません)
  ネットで調べてみると、ありました。
 
・MIYATA(ミヤタ)クォーツ・エクセルα
   サイズ 26インチ
  カラー シルバー
  変速 3段変速付き
  重量 10.5kg(変速機なしモデルの重量)
http://item.rakuten.co.jp/joy-joy/dqf630/

 これまで使っていたホームセンター特売のママチャリなら四台買える値段ですが、思い切って買いました。この機種は受注生産だということで、二週間ぐらい待って二月初めに届きました。

P2070102

  乗ってみると本当に軽い。坂道も軽い。これまで立ってこがないと登り切れなかった坂が座ったままで登りきれました。さすがに下関まで行けそうな気まではしませんが、郵便局まで荷物を運ぶ毎日の仕事がちょっと楽になりました。
 
 そのうち赤と黄色だんだらのとんがりヘルメットをかぶって、
 
  サイクリング サイクリング
  ヤッホー ヤッホー

とやってみましょうか。

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