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2008年7月10日 (木)

本の殺人事件簿 Ⅰ

  古本の出てくる推理小説第二弾は『本の殺人事件簿 Ⅰ』(シンシア・マンソン編、バベル・プレス、2001年)。原題は『Muder by the Book』、本に関するミステリ傑作二十選ということで、Ⅰにはそのうち次の十一編の短編が収められている。

ビル・ジェイムズ 「ボディ・ランゲージ」
ロバート・セネディック 「作家とは……」
ビル・プロンジーニ 「パルプマガジン・コレクター」
ミシェル・ノールデン 「ジェーン・オースティン殺人事件」
ジェイムズ・サーバー 「マクベスの謎」
エドワード・D・ホック 「犯罪作家とスパイ」
マーガレット・マロン 「ハラルド警部補と『宝島』の宝」
ジョン・ネルソン 「大いなる遺産のゆくえ」
マイクル・Z・リューイン 「ザ・ヒット」
マイクル・イネス 「ウッドパイルの秘密」
ジョぜフ・ハンセン 「女の声 ]

Photo  

 わたしは、ミステリに興味はあってもそんなに詳しいわけではない。上記の作家のうち知っていたのはビル・プロンジーニだけである。そして残念ながら、この十一編のなかで「古本」が重要な役割を果たすのも、プロンジーニの「パルプマガジン・コレクター」だけだった。
 あとは作家や古典に関係はあるが、「古本ミステリ」とは言い難い作品ばかりなので、タイトルをあげるにとどめ、言及しない。

 パルプマガジンというのは、主に二十世紀前半の、粗悪な紙に刷られた、アメリカの大衆小説雑誌を総称する言葉で、探偵小説、SF、西部小説などの各種雑誌があったそうだ。
 ビル・プロンジーニは、自身がパルプマガジンのコレクターであって、この短編の主人公「名無しの探偵」もパルプマガジンのコレクターであるという設定になっている。しかもこの短編では、金持ちのパルプマガジンコレクターが密室で殺され、そのダイイング・メッセージとして三冊のパルプマガジンを握りしめていたという、まさにパルプマガジンずくめになっている。

 その三冊の本とは『クルーズ』、『キーホール・ミステリーマガジン』、『プライベート・ディテクティヴ』。このタイトルから名無しの探偵は犯人を推理する。

 うーん「キーホール」は鍵穴だから、これは密室に関係がある。「プライベート・ディテクティヴ」は私立探偵だろ。探偵が怪しいのか?「クルーズ」と言えば船とか船員がからむのか?
 ところがこれは船のクルーズ(cruise)、クルージング(cruising)ではなく、このクルーズは clues で、手がかり・糸口の clue なのだった。 だから「手がかり」は、「キーホール」と「プライベート・ディテクティヴ」だというダイイング・メッセージになる。
 日本人は r と l の音の区別がつかないからなあと変に納得しながら読んでいくと、この先には、クルーズよりさらに思いつけそうにないネタが隠されていて、ピンと来ないまま事件は解決してしまった。

 種が明かされたとき、なるほどそうかと感心するのが推理小説の楽しみのひとつなのだが、こちらにはわからないアメリカ人の内輪ネタでは感心も驚きもしようがない。肩すかしをくったような気分でちょっと残念だった。

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