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2009年2月17日 (火)

17 マーク・トウェイン

 このカテゴリーはずいぶんご無沙汰してしまいました。ストックが涸れてきたので、鋭意準備中です。
 今回はマーク・トウェインの『ちょっと面白い話』(大久保博 編訳、旺文社文庫、1988)から。わたしの好きな作家です。
 この本はマーク・トウェインの書いたものや逸話から、面白い話を拾い集めたものですが。さらにそこから本が出てくる話を拾いました。
 文中でクレメンズとあるのは、マーク・トウェインの本名(サミュエル・ラングホーン・クレメンズ)です。

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 批評とは奇妙なものだ。もしわたしが、「彼女は素っ裸だった」と書き、それから彼女の肉体をことこまかに描いていったら、批評家たちはみな大声で非難するだろう。そんな本を茶の間のテーブルの上に置いておこうなどと言い出す者ももいないだろう。ところが、画家はこれをやるのだ。そして人々は老いも若きも集まってきて、それを観察し、語り、そして、ほめるのだ。(P130)

 マーク・トウェインはロンドンに滞在していたころ、イギリスの学者たちが集まるある宴会に招待された。話がはずんで、いつのまにか、「ベイコン・シェイクスピア同一人物説」についての討論になった。意見は二手にわかれた。やがて、興奮した一人が、さいぜんから黙ってみんなの話を聞いていたトウェインに向かって、彼の意見を求めた。トウェインは答えた。
「わたしは今のところどちらとも言えませんな。そのうち天国へ行ってシェイクスピアに、いったい誰が彼の戯曲を書いたのかきいてみるつもりです」
「いやあ、クレメンズさん、シェイクスピアは天国になんかいませんよ」と、そのベイコン説狂信論者は言った。
 するとトウェインは、
「それなら、あなたがきいてみるんですな」(P150)

 マーク・トウェインが特に好んでいた習慣は、ベッドの中で読書や執筆をすることだった。
 ある日、約束の記者がインタビューをしにやってきたが、そのときも、トウェインはまだベッドの中で本を読んでいた。記者は戸口のところでためらった。そこでクレメンズ夫人は、半分あいている戸のすき間から夫に尋ねた。
「ね、あなた、記者の方にご迷惑だと思いません──そんなふうに、ベッドの中にいらしたりして?」
 トウェインは屈託のない落ち着きはらった声で言った。
「いやあ、もしそう思うんならね、もう一つベッドを用意してもいいんだよ、その人のためにね」(P207)

 原稿を書いているとき、マーク・トウェインは特殊な辞書が必要になった。その辞書は隣の家にあることを知っていた。そこで使いの者をやって借りてこさせようとした。使いはから手でもどると、報告した。喜んでお貸ししたいが、先さまの書斎で使っていただきたいとのことでございます。
 ひと月ほどすると、今度はその隣人から使いがきて、自分のところのが壊れてしまったので、トウェインのところの芝刈り機を貸してほしいと言ってきた。トウェインは伝えさせた。喜んでお貸ししたいが、当方の芝生で使っていただきたい。(P208)

 ある人がマーク・トウェインの家を訪れ、そこにあるおびただしい数の本にびっくりした。しかし、その本の多くがしかるべき設備もなしに、ただ漫然とあちこちに積み重ねてあるのを見て、更にびっくりした。
「だってね」
とトウェインは説明した。
「とてもむつかしいことですからな、本棚まで借りてくるのは」(P258)

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