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2010年4月23日 (金)

23 駆け出し作家たち

 ひさしぶりの「本のジョーク」です。今回は売り込みに苦労する駆け出しの作家たちのジョーク。いずれも植松黎編・訳『ポケット・ジョーク15 芸術家』(1985、角川文庫)からです。

 15

共同謀議の証拠

 駆け出し作家が友人に打ち明けた。
「どうやら出版社どもが、共謀してぼくの邪魔を始めたらしい」
「どうしてそう思うんだい?」
「見たまえ。この小説を送った十二の出版社がみな同じ理由で出版を拒否してきたんだ」(P192)

皆なが知っている

「よく書けている」出版社の社長が言った。「しかし、ウチの社の方針として、誰れでも知っている名前の作家しか、出さないことにしてるんでね」
「それはちょうどよかった」新米作家が言った。「ボクの名前はスミスなんです」(P192)

水路

 イギリスのある有名な作家のところに、作家志望の青年から一束の原稿が送られてきた。有名作家はその男を知らず、名前もきいたことがなかった。その未知の男は、原稿にそえて、この作品を世に送り出すべき”良い水路”があったら教えてほしいとも頼んできたのだった。
 大作家はそこで、次のような手紙をそえてその原稿を送りだした。
「貴作読ませていただきました。この作品にとっての最良の水路は、英仏海峡であると小生は考えます。英国自慢の排水溝を経由して」(P186)

三要素

 編集者が、かけ出しの作家にいいきかせた。ベストセラーを書くには、まず冒頭から読者の心をとらえなければならない。それには、最初の一節にセックス、上流社会、それに意外性といった読者が関心を持ち、同時にどぎもを抜かれるような要素をとりそろえておくのが望ましいと。
 まもなく編集者は、その若い作家の作品を受け取った。その作品の冒頭は──。
「『王さまのこん畜生めっ!』公爵夫人が言った。『ヒザの手を、とっととよけやがれ、このクソッタレ!』」(P184)

馴染みの人物

 ある若い作家が、書き終えたばかりの悲劇を読んできかせていた。聴き手のひとりがしょっちゅう帽子をとっては、あいさつするような様子をしているのが目にとまった。作家がその理由を尋ねた。
「いや、どうってことはないんだが」その批評家が言った。「旧知の人物とあうと、どうしてもあいさつなしですませる気にはなれないんでね」(P187)

対面

「この詩はきみが自分で書いたのかね?」と編集者がたずねた。
「ええ、すべてぼくが書いたものです」
「そうですか」と編集者は生真面目な顔で言った。「お目にかかれて光栄です。エドガー・アラン・ポーさん、私はあなたはずい分以前にお亡くなりになったのだと思っていましたよ」(P187)

勇気

「キミがとりかかっていた『為せばなる、必要なのは勇気だけだ』という本、もう完成したかね?」友人が、ライターのジョンソン氏に尋ねた。
「ああ、完成したよ」ジョンソン氏は憂うつそうだった。「だが、出版社に勇気がなくてね」(P191)

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