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2010年10月 5日 (火)

佐藤優講演会

 10月3日(日)は、佐藤優講演会に行ってきました。横浜西口のかながわ県民センターのホールです。意外にすいていました。尖閣をめぐる外交問題と検察の証拠捏造問題が連日メディアをにぎわしているところですから、佐藤優の講演なら超満員ではないかと思っていたら、それほど大きくもない、会議室のようなホールで、三人がけの机に二人という席がちらほら残るくらいの入りでした。「日本精神によって、国家統合の危機を克服せよ」という勇ましい演題に、主催の古書・軍学堂という名前を見て、ちょっと入りにくかった人もいたのかもしれません。

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 この演目で日本の「国体」の本義について話をするつもりだったが、その後尖閣の問題が起きたので、そちらを中心に話します、ということで期待どおりの話になりました。
 漫談風に話しながら、厳しい意見や辛辣な批評を交え、また真摯に「国益」を守れと、二時間近く精力的に語りました。そんなに話がうまいという感じではありませんが、みんなずっと聞き入っていました。
 その後、会場で寄せられた数十枚の質問用紙をもって、一枚ずつ全部答えていったのには驚きました。噂どおり、恐ろしくエネルギッシュで、該博な知識の持ち主です。わたしなど聞いたことのない、読んだことのない人や本、理論などについての質問に、ほとんど間髪をおかず次々明確に答えていました。「この本は読んだことがないので知りません」と答えたのは一件だけで、それもわたしの感じではかなりどうでもよさそうな本でした。

 その中でおもしろかった話をいくつか。(わたしのメモなので、間違いがあるかもしれません、ご承知を。)

・(検察の証拠捏造)いつもやってることが、たまたまバレただけ。前田検事を那覇へ派遣すれば、船長からすぐ自白調書がとれたのに。

・わたしは、罪状否認、証拠隠滅の恐れ、逃亡の恐れありという三つの理由で五百数十日拘置所から出られなかった。今回の船長もこの条件にあてはまるのにすぐ釈放された。どうしてこんなに違うのか。怒りがこみあげてくる。

・とにかく前田のような優秀な検事を派遣して自白調書をとるべきだった。いつものようにやればすぐできる。冤罪を作るわけではなく、れっきとした犯行の事実があるのだから問題ない。総領事が来ても、中国がいつもやっているように、沖縄への飛行機の切符を売らないとかして会わせないようにすればいい。あらゆる手段を使うのが外交だ。

・そのうえで、略式起訴で処分してしまえばよかった。公判をひらくと向こうも優秀な弁護士を派遣してきて、その後長期にわたって問題になる。

・釈放してしまって、今後どうするのか。いつか処分を出さないといけない。それが検察審査会で不当とされ、公判を開くことになったら、中国へ船長引き渡しの請求をしなければならなくなる。そのときにはまた問題が沸騰する。全然先が読めていない。

・もと市民活動家のおじさんには外交に関する基礎体力がない。鳩山や小沢ならこんな対応はしなかった。

・今回の件は謀略でなく偶発的な事件。偶発事件のときにこそ基礎体力が出る。これではまた起きる。

・大平と登β小平の間で密約:日本は尖閣を無人島にしておく。

・中国は十年くらい前から nation building を行い、国民国家としてまとまりはじめた。民族としてまとまるためには敵の存在が必要で、日本が敵とされた。だからうまくいくわけがない。それを前提とした外交をしなければいけない。

・ロシア人には二種類ある。悪いロシア人ともっと悪いロシア人だ。中国人も一緒。

・レアアースを締め上げてくるなら、日本はチベットに接近すればいい。レアアースの97%はチベットから来る。ダライ・ラマを呼んでレアアースの話を、とか言えば中国も考える。

・厚生省の元局長が無罪になったのは本当によかった。しかしこれでメディアが、部下が悪事を働いたことの監督責任、厚生労働省の責任まで、まるでなかったかのように扱っているのはいかがなものか。

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 農本主義的な考えが大事だ。自分で一生懸命働いて稼いで富を積む、それが国富になり、国益になる。それを基本に、外交ではあらゆる手段を尽くして日本の国益を守れ、と熱く語り、政府への示威行動も示唆するのを聞いて、ああこの人は単なる評論家ではなく、「国士」として生きようとしているのか、と思いました。
 外交官として「国益」のために猛烈に働いたのに、国に、組織に、上司・同僚に裏切られるという苛酷な経験をして、考えに考えたあげく、やはりその「国益」にこだわって、自分の考える「国」のために、ということなのでしょう。
 原稿や講演も、企画に賛同でき、それにかける編集者や企画者の情熱が感じられれば無料でやっているそうです。この講演会も無料と聞きました。やはり「国士」です。

 

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