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2010年10月13日 (水)

28 ちょっと古いジョーク

 先代林家三平の『どうもすみません 駄じゃれ風俗帖』(1962、光風社)という本があります。

 林家三平が売り出したのは、わたしが小学校高学年から中学生だった頃。「どうもすいません」とか「もう大変なんすから」というような定型ギャグで大売れに売れていましたが、子どものときからラジオの寄席番組が好きだったわたしは、たいして面白いとは思いませんでした。笑えないダジャレが多く、しかも「こうやったら笑って下さい」とは芸人として不届きではないかくらいに思っていました。
 当時ナマで見ていた人は、三平にはオーラがあって、ネタは馬鹿馬鹿しかったけれど、とにかく面白かったと言います。テレビを見ていただけなので、そのあたりがわかりません。一度見てみたかったな、と思います。

 この本はその頃やっていた小咄のようなものを集めた本で、今読んでも、わたしの趣味にはちょっとあいませんが、ともかく本に関するジョークを収集するという立場から、ひろってみました。

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推理趣味

 このごろ推理趣味がはやってんですってね、昔は探偵小説、今ではミステリーと名がかわりましたけど、推理小説の好きな人って朝っから晩まで何か事件がおこらないかってんで待ちかまえてンですから……
「おい山田君、ゆうべ考えた推理小説聞いてくれ」
「どんなスジだ」
「室の中でね、独身の女性が殺されてるンだ、その枕もとにバラの花が一輪と、スイミン薬と短刀がおちでたんだ、君はこれを他殺だと思うか」
「バラの花とスイミン薬ねえ、そりゃ自殺じゃないか」
「ところがこれが絶対に他殺なんだ」
「どうしてだよ」
「だからはじめに言ったろ、独身の女性が殺されてたんだよ、だから他殺だ」
(下線部は原本では傍点、『どうもすみません 駄じゃれ風俗帖』P56)

五年前

 約束はするけどすぐ忘れる人がいて、いま約束したのに、五分もたたないうちにもう何を約束したのか忘れちゃって、
「おい山田、いま、君となんの約束したんだっけ?」
「しょうがないな、もう忘れたのか、君といました約束はな、もう君とはぜったい約束しないという約束だよ」
 なかにはもっと忘れっぽい人もいて、
「あなた!この本の間にはさんである写真の女の人はだれです!」
「そりゃお前、僕が五年前に結婚の約束をした女性だ」
「まア!あなたって人は、あたしというものがありながら、こんなおかちめんこな女と結婚の約束をして五年間もあたしにかくしていたんですか!くやしい!」
「おいおいよく見ろ。そりゃ五年前のお前の写真だ」
(『どうもすみません 駄じゃれ風俗帖』P191)

 前にも紹介しましたが秋田実編『ユーモア辞典3』文春文庫、1978)は、三平より前の時代からジョークを集めていたようで、これもちょっと古いかなというところがありますが、同じ趣旨からひろっておきます。(→18 秋田實『ユーモア辞典』

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心得すぎ

「お前は娘に、”すべての若い女が心得ておかねばならないこと”という本をやったのかい?」と父親がたずねた。「ええ」と母親が答えた。そして考えながら、
「そしたらね、あの子、誤りが二十四カ所ほどと、二章ほど書きたす必要がある、といま著者に手紙をかいていますわ」
(『ユーモア辞典3』、P230)

不美人多し

「あの筆野咲子女史はたいへん金持ちになったそうだね」
「うむ、たいした金持ちになったようだ」
「親父の遺産でも受け継いだのか」
「なに……『美人への注意』の一書を著わしたんで」
「それで美人が争ってその本を買うからか」
「いや、美人が買うんじゃアなにほどにもならぬが、不美人が争って買うので大儲けをしたんだ!」
(『ユーモア辞典3』P238)

わいせつ

 きわどい場面、みだらな言葉、ないしそういうほのめかしを決して出さないという、サタデーイヴニングポストの鉄則は、カサリン・ブランの小説”赤髪の女
”が連載された時に破られた。
 第一回目は、主人公たる女秘書と社長の二人が、妻のいない彼の家で、ふけていく夜を酒を飲みながら語り合っているところであった。
 第二回目は、二人が朝食をしているところから始まり、多くの読者を愕然たらしめた。
 編集長ジョージ・ホラス・ロリマーは、非難攻撃の投書に答えるべく次のような一文を刷らせた。
「本誌は、連載小説の登場人物が、回と回の間で行った行為の責任を負うことはできません」
(『ユーモア辞典3』P203)

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