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2011年2月16日 (水)

34 中国の古いジョーク2

 中国の古いジョーク、あまり受けていないような気がしますが、まだあるので紹介します。
 まず、前に蘇東坡の「赤壁の賦」が出てきましたが、その蘇東坡本人が出てくる話。

笑の字           調謔編

 荊公が『字説』という書を著したときいて、蘇東坡がたわむれていった。
「『竹』で『馬』を鞭うつと『篤』(篤実)になるのはわかるが、『竹』で『犬』を鞭うつと『笑』うのは、どういうわけですかな」

(駒田信二編訳『中国笑話集』1978、講談社文庫、P253)

 馬を鞭うてばおとなしく篤実になるが、犬は笑うのか、という漢字のつくりに意味をこじつける話です。よくあります。今朝もNHKの朝ドラ「てっぱん」で、主人公の父親が「長男には金に欠けると書いて欽也、次男には金を失うと書いて鉄平と名付けてしまった」と言っていました。もっともらしく聞こえることもありますが、本来の漢字の成り立ちとは違う、ただのこじつけ話が多いようです。

書物が低い        笑倒

 受験勉強のために寺に寄宿している書生、毎日外へ遊びに出ていたが、ある日突然、昼ごろに帰ってきて、小僧に、
「書物を持ってきてくれ」
という。小僧が『文選(もんぜん)』を持って行くと、
「これは低い」
というので、『漢書(かんじょ)』を持って行くと、また、
「これも低い」
という。そこでこんどは『史記』を持って行くと、やはり、
「これも低い」
という。小僧が和尚にそのことを話すと、和尚は、
「その三書は、一書に通じているだけでも大学者といえるのに、どうしてどれも低いというのだろう」
と不審に思い、書生のところへ行ってきいてみると、書生は、
「枕にするのですよ」
といった。

(駒田信二編訳『中国笑話集』1978、講談社文庫、P234)

 これはよくあるジョークで、枕にするのが百科事典だったり、電話帳だったりします。

蛍雪        笑府

 東晋の車胤(しゃいん)は家が貧しく、燈油を買うことができなかったので、夏の夜は薄絹の袋に数十匹の蛍(ほたる)をいれてその明りで読書をした。孫康(そんこう)も家が貧しく、やはり燈油を買うことができなかったので、冬の夜は雪を積み上げてその明りで読書した。二人はこうして、夜を日についで勉強した甲斐があって、後、出世して車胤は吏部尚書(りぶしょうしょ)になり、孫康は御史大夫(ぎょしたいふ)になった。
 ある日、孫康が車胤を訪ねて行ったところ、車胤は家にいなかった。あの勉強家が、と孫康は不審に思い、
「どこへ行かれた?」
 とたずねると、門番が、
「たぶん、蛍を取りに行かれたかと思います」
 と答えた。
 その後、車胤が答礼のために孫康を訪ねて行ったところ、孫康は庭に出てぼんやりとたたずんでいた。車胤が不審に思って、
「どうして読書をなさらないので?」
 ときくと、孫康はふり返っていった。
「空模様を見ていたのです。このぶんでは雪は降りそうにもありませんな」

(駒田信二編訳『中国笑話集』1978、講談社文庫、P388)

 有名な故事の後日談。出世してからも若い頃の習慣はぬけなかったようです。

婦徳          妬記

 謝太傅(しゃたいふ)(東晋の宰相謝安(しゃあん)の夫人劉(りゅう)氏はたいへん嫉妬ぶかく、夫が妾(めかけ)を置くことをゆるさなかった。謝太傅は歌舞音曲が好きだったので、芸のうまい妓女を妾に置きたいと思っていたが、もとより夫人は承知しない。それを知った親戚の者が夫人の劉氏に、
「詩経には妻が嫉妬をしないことを婦徳としてほめた詩がありますね」
 というと、夫人は、
「詩経は誰が編んだのですか」
 ときき返した。
「聖人の周公です」
 と答えると、夫人はいった。
「そうですか。もし周公ではなく周公夫人が編んだら、そんな詩は取らなかったでしょうよ」

(駒田信二編訳『中国笑話集』1978、講談社文庫、P408、原著は無題)

 次のジョークは『中国笑話集』ではなく、寺尾善雄『中国のユーモア』、河出文庫、1982)から拾ったもの。

悟るところがあった

 ある金持ちの息子が読書嫌いであったため、父親はなんとか本を読ませようとして、息子を書斎に閉じ込めた。しばらく経って父親がのぞいて見ると、息子は本を前にして沈吟している様子だったが、やがて大声をあげた。
「判ったぞ」
 父親は、息子になにか悟るところがあったものと思い、喜びのあまり、とび込んでたずねた。
「息子よ、でかした。合点が行ったか」
 息子いわく、
「僕はいままで、本というものは手で書いたものとばかり思っていたが、なんのことはない、印刷したものなんだね」

(寺尾善雄『中国のユーモア』、河出文庫、1982、P11)

 これで中国の古いジョークは、とりあえず一区切りです。

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