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2011年5月22日 (日)

スイス本メモ

 6月に学生時代の友人たちとスイスへ遊びに行くことになり、あわててスイス関係の本を読み始めた。読んだらメモしておかないとすぐ忘れてしまうので、ここに書くことにした。

 スイスを舞台にした小説というと『アルプスの少女ハイジ』くらいしか浮かばない。『スイスのロビンソン』というのもあったけれど、あれは漂流物語だから場所はスイスではない。
 とりあえず見つかったのがこれ。

1 ゴットフリート・ケラー 『グライフェン湖の代官』 (岩波文庫、1952)

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 ケラー(1819-1890)はドイツ系スイスの小説家。この作品の刊行は1877年。

 時代は1783年、42歳の独身、グライフェン湖地区代官ザロモン・ランドルト大佐が、青春時代の、いずれも実ることのなかった五つの恋の物語を回想し、そして最後にその相手だった五人の女性をグライフェン湖畔の館に招待し、一夕の宴を催す。
 岩波の解説では

ケラーが人間としても作家としてももっとも円熟した時代の作品.全体が50歳を越えた作者の冷静な観照に包まれ,美しい節度ある人間性と淋しさをたたえた芸術品となっている.
http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/32/9/3242590.html

 ちょっと粋な話、というところか。当時の貴族がどんな生活をしていたかがしのばれる。

 音楽と歌声は時々チューリッヒ山の森からかすかな木魂を返した。そうして大きな、まばゆいばかりに白いグラルネ連山は、風の凪いだ湖面に影を映していた。次第に迫ってきた夕暮れが、すべてをおだやかな金色の光のうすぎぬでおおいはじめて、青い色が盡く深さを増して来たとき、代官は舟を再び館の方に向け直し、豊かな歌声の響くなかで波止場に横付けにしたので、婦人たちはまだうたいながら岸に跳び上った。(P124)

Photo_2

               (P3)

 グライフェン湖はチューリヒの東10kmくらいにある小さな湖。今回の旅程には入っていない。

2 シラー 『ヴィルヘルム・テル』 (岩波文庫、1957改版)

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 ごぞんじウィリアム・テルの物語。
 岩波の解説。

封建領主の圧制に堪えかねたスイスの民衆は,盟約を結んで立ち,スイスの独立を図ろうと企てた.ヴィルヘルム・テルこそは彼らの行動の中心であり,民衆の尊敬すべき英雄であった.この劇のクライマックス「テルのリンゴのまと」の話は全世界に知られている.群衆登場の舞台処理の巧妙さを謳われるシラー最高の傑作.
http://www.iwanami.co.jp/search/index.html

・1300年前後、フィアヴァルトシュテット湖周辺を舞台に、神聖ローマ皇帝の圧政に抗して立ち上がろうとする中央スイスの三地域(原初三邦あるいは三州といわれる)の豪族・民衆たちの物語に、腕は当代随一で人望厚い狩人テル対悪代官ゲスラーの物語がからむ。テルは独立運動の主導者ではなく、圧政に我慢しきれず立ち上がる民衆の一人。

・文庫の解説によれば、スイス国民はテルの物語は実話だと信じて疑わないが、実は伝説で、リンゴの的の話は北欧のゲルマン人の話からきたものらしい。

・訳の「テルどん」という仲間内からの呼びかけが気になる。テルが民衆の一人であることをあらわすためなのだろうが、「どん」というと丁稚や女中に対する呼びかけのようで違和感がある。「西郷どん」というのもあるが。

・国民国家成立前の国を現在と国と同様の感覚で考えてはいけないのだが、この頃の西洋の、王、貴族、領土、民衆の関係がよくわからない。スイスの独立というのも、現代の植民地が独立するのとはかなり違うのだろうけれど、ついつい現在の国をもとに考えてしまう。

・原初三州(シュヴィーツ、ウーリ、ウンターヴァルデン) のあたりへは機会があれば行ってみたい。

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