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2011年11月 7日 (月)

37 ロシアのジョーク

 前回、本とは関係のないロシアのジョーク(36 大統領の交代制)を紹介したので、今回はロシアの「本のジョーク」をどうぞ。
 まずジャンナ・ドルゴポーロワ『ロシアより笑いをこめて 世界のジョーク集4』(光文社文庫、1986)から。これもジョークのタイトルがなかったので、わたしが仮につけました。

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戦争と平和

「過去半世紀のあいだ、なぜ『戦争と平和』に匹敵する文学作品がひとつも現れなかったのだろう?」
「おおかたの作家は『戦争と平和』に匹敵する大作のひとつやふたつ書き上げるぐらいなんでもないと思っているけど、なにぶんにも、それを書く暇がないんだ」

(『ロシアより笑いをこめて 世界のジョーク集4』P148)

度数

 兵長が入隊したばかりの兵卒に一般常識を教えている。
 兵長は噛んで含めるように講義していた。
「つまり、こういうことだ。水は九十度で沸騰する」
 隊列の後ろのほうで、眼鏡をかけた兵卒が手をあげた。
 兵長が、目敏(めざと)くそれに気づいて、
「なんだ?」
 兵卒が起立した。
「逆らって申しわけありませんが、水が沸騰するのは百度であります」
 兵長は気分を害した。
 彼はぼやく。
「やれやれ、インテリどもがやたらに多くていかん。どいつもこいつも眼鏡なんかかけおって……」
 彼は教本を開くと、ぶつぶついいながら、ページを繰った。
「クソッ、青っちょろい尻っぺたをしくさって……、頭でっかちのインテリどもめ……」
 探す記載をやっと見つけると、にやっと、兵卒を見上げた。
「やりこめたつもりでいるんだろうが、え?たしかにおまえのいうとおりだ!沸騰するのは百度だ。そして九十度でもある。それが正しい角度だ、覚えておけ……」

(『ロシアより笑いをこめて 世界のジョーク集4』P155)

 次は、寺谷弘壬編『マンガとユーモアでみるソ連』(1990、太陽企画出版)から。
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党員と非党員のちがい

 先生が生徒に党教育をしている。
「イワン君、共産党員とは?」
「はい、先生。マルクス、レーニンの本を読む人です」
「では、非共産党員とは?」
「はい、先生。マルクス、レーニンの本をよく読んで、理解した人です」

(前掲書、P68)

飛ぶように売れた自伝

 ブレジネフ書記長が米ソ会談に出発する前、自分が帰国するまでに三つのことをやっておくよう秘書官に命じた。
 それは、商店の行列と、教会にあふれんばかりの人間と、本屋につみあげられた自伝をなんとかしろということだった。
 帰国してみると、店の前に行列がない、教会の前を通ると、人びとが教会の中に唾をはきながら遠ざかっていく。そして、本屋には彼の自伝がつみあげられていない。
「よくやった。ほうびをやるが、一体どうやったのかね」と秘書官にたずねた。秘書官は、こう言った。
「簡単なことです。まず店の行列がなくなったのは、店に品物をまったく置かないようにしたからです。教会に人が行かなくなったのは、あなたの画像を十字架にはり付けたからです。そして、自伝が飛ぶように売れたのは、これはアイデアです。トイレット・ペーパーに印刷するよう命じたからです」

(前掲書、P127)

 これだけはさみしいので、もうひとつ平井吉夫編『スターリン・ジョーク』(河出書房新社、1983)から長いのをひろっておきます。

不滅

カール・マルクスが、ある日モスクワのコミソテルン本部にやってきた。入口で赤軍兵士にとりおさえられる。
「通行証!同志」
「通行証?私はカール・マルクスだよ」
「それがどうした! たとえ、きみが同志ピアトニツキーだとしても、通行証を持ってなくちゃならんのだ」
「同志ピアトニツキーって、だれだ」とマルクスがいぶかしげにたずねる。
「同志ピアトニツキーは同志ピアトニツキーだ。ここでは一番の要人だ」
「その人に会いたい」とマルクス。
「では、あそこの窓口へ行って、通行証を申請しなさい」
 窓口でもすったもんだがあったが、やっと一枚の用紙をもらう。
「名前は? 一宇一字どうぞ。K、A、R……。生まれは? トリエル? 何区ですか? わかりせんな。トリエルってのは、どこにあるんです?」
「プロイセン王国」
「おかしな人だ。王様なんて、もういなくなったのを知らないの? で、所属政党は?」「私は第一インターナショナルの成員だ」
「ここでは第三インターナショナルしか認めてない。同志ピアトニツキーが、あんたに会うかどうか、わからんよ」
 やっとマルクスはピアトニツキーの部屋に適された。ピアトニツキーは疑わしそうに質問する。
「モスクワになんの用で? 同志マルクス。どうやって来ました? 国際連絡部からは、あなたの到着について、なにも報告がありませんよ。どうして国際連絡部に知らせないんです?あなた、旅券を持ってますか?」
 マルクスはポケットから旅券を出す。ピアトニツキーはうさんくさげに調べていたが、いきなり電話をつかんだ。
「ミロフ、急いで下りてこい! 面白い旅券があるんだ。いや、にせ物じゃない。本物だ!」
 ついで客に向きなおり、
「同志マルクス、モスクワでなにをなさりたいのですか?」
「私の理論がどうなったか見たいんだ」
「残念ですが、同志マルクス、それは私の管轄じゃないんです。宣伝扇動部のベラ・クンかマルクス・エンゲルス研究所の同志とお話し下さい」
 ピアトニツキーは電話をとり上げる。
「同志リャザノフ、いま、ここにお客さんがいるんだがね、カール・マルクスさんっていう。君のところへやっていいかい?」
 リャザノフはとび上がって喜んだ。
「大至急こっちへ! 緊急にマルクスが必要なんだ。原稿の読みにくいところを判読してもらわなくちゃならん」
 カール・マルクスはマルクス・エンゲルス研究所で、大いなる敬意をもって迎えられた。リャザノフは鋼鉄づくりの厳重な保管室を誇らかに見せる。そこにはマルクスの貴重な原稿が保管されている。リャザノフは丁重な身振りで、マルクスに入るよううながした。
 なんの気なしにマルクスが保管室に入ったとたん、リャザノフは欽の扉を閉めた。
「とうとう、あなたを手に入れた。いまや、あなたは永遠に不滅だ!」

(原注)ラデックもピアトニツキーもリャザノフもベラ・クンも、みんな大粛清によって消えた。(平井吉夫編『スターリン・ジョーク』P39)

 ソ連がマルクスを監禁してしまったというジョークはわかるけれど、この注釈は重い。

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