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2011年12月16日 (金)

sp28 アッペンツェル

(第9日続き 11/06/16)

アッペンツェル

 マーチン青年が最初に案内してくれたのが、アッペンツェル Appenzell だった。この町の話は、来たことのあるK機長から聞いていた。直接民主主義の町で、今でも年に一度の住民集会で重要事項を決しているという。
 小さな町で、日本の女の子なら「かわいい!」を連発しそうなところだ。

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 こんな店や建物が並んでいる。

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 教会。右の二枚は教会とは別の小さな礼拝堂。

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 これはチーズと土産物の店。チーズも名物だそうだ。

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 スイスの民主主義について書いたものは、必ずと言っていいほどこのアッペンツェルの全住民集会(ランツゲマインデ Landsgemainde )に触れているようだ。犬養道子はテレビのおかげで有名になったと多少揶揄して書いており、実際にその日はお祭りのようで、おおぜいの観光客が見に来ているらしい。
 ここが毎年4月の最終日曜日にその住民集会が開かれる広場(ランツゲマインデプラッツ)。右の写真の石像は、集会で同意の挙手をしている姿で、腰にサーベルをさげている。今でも正装しサーベルを下げて参加する住民が多いという。

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 わたしは戦後の生まれで、戦後民主主義教育を受けて育った。子供のころ、直接民主主義が基本だけれど、それができないから間接民主主義でやっていると習った。それが最近は直接民主主義は衆愚政治だ、ポピュリズムだ、選ばれた選良による間接民主制の政治の方が優れているという論調が多いように思う。
 スイスでも、全員参加の住民集会となると、今でもやっているのは、このアッペンツェルのほか、もう1州だけだという。アッペンツェル・インナー・ローデン州の人口は一万六千人くらい。だから集会の参加者はこの広場に集まれるくらいで、約三千人と書いたHPもあったが、多くても数千人くらいだからできるということもあるだろう。
 この集会をスイス大使として見学した國松孝次の『スイス探訪』(角川書店、2003)という本には、こんな話が書いてあった。集会終了後、

 私の隣で見学していたフランス大使が感に堪えぬ面持ちで声を上げた。「こんなこと、うちの国では不可能だ。だいいち、二時間半もワインも水も飲まさず住民を立たせておいたら確実に暴動が起こる」。(P42)

 フランス大使の冗談はさておき、スイスには今でも直接民主制の強い志向がある。地方でも国でも、何かことあれば最後は住民投票で決めるということになっていて、しょっちゅう投票をやっているようである。前掲書で國松はこうも書いている。

(前略)スイスは、重要な国事はすべて国民が決定するという国民主権の原則をかたくななまでに守り通してきている国である。
 連邦議会で、法案を可決し、さて施行しようとしても、全人口の一%にも満たない五万人の有権者が「反対」という声をあげ、がんばると、その法案の是非が国民投票に付されるというのが、こちらの仕組みである。そして、その国民投票で、過半数の投票者が「反対はもっともだ」という結果を出すと、その法案は元の木阿弥。一から出直すことになる。(P137)

 だから最終的に決定するまで時間がかかり、スイス人はスローモーだというジョークの種にもなっているのだという。日本ではできるだけ住民投票にならないよう実施の条件を厳しくしているが、スイスは地方でも国でも敷居を低くして、問題があったら住民投票で決めようということらしい。国会で決めたことをひっくり返せるのだからすごい。

 この本は、わかりやすい、いい本であった。著者は元警察庁長官で、あの狙撃事件の被害者である。大使時代の思い出話とからめて、スイスの歴史的特性や共同体などについて簡潔にまとめている。

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 ついでに、これまで何度か引用した犬養道子の『私のスイス』(中公文庫、1983)もあらためて紹介しておく。國松の本にも「最も優れたスイス紹介の書である。(p119)」と書かれている。文学的な山岳紀行の部分はちょっとわたしの趣味に合わなかったが、歴史や共同体を論じた部分は、なるほどそうであるのか、と感心し納得するところが多かった。

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 さてそろそろアッペンツェルから次へ行く。右はsp02 What is this? 2にも書いたアッペンツェルの道路の謎。これが何で、何のためにこの丸い部分がまわっていたのか、今でもわからない。

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 まわりはこんなところ。アッペンツェルもいいところだった。

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