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2012年10月31日 (水)

J40 イギリス・ジョーク集

 『イギリス・ジョーク集』(船戸英夫訳編、実業之日本社、1974)から本に関するジョークをひろってみました。

J
白髪

 母親がまだ幼い弟に本を読んで聞かせていると、立ったまま聞いていた七歳になる兄が、突然叫んだ。
「お母さんの頭に白髪があるよ」
「じゃ、抜いてよ」
 兄は白髪を抜いて母親に手渡しながらいった。
「きっとおばあちゃんのだね」
(P103)

 ある淑女、窓辺で本を読んでいる紳士に近づいていった。
「私、あなた様のご本になりたいですわ」
 彼女は彼に惚れていたのだ。
「そうなっていただきたいですな」
と、彼は答えた。
「なれるとしたらどんなご本に?」
「そう、暦がいいですね、毎年新しいのと取り代えられますから」
(P139)

誕生祝い

 作家が書店で新刊小説のサイン会を開いていた。
「妻のためにサインを願います」と、彼の前に表紙をめくりながら本を差し出した男がいた。
「こんな誕生日の贈り物をもらえば、妻もびっくりしますよ」
「びっくりしますか?」と、いい気になった作家はニヤニヤした。「ところで、ほんとうはなにを欲しがっていたのです?」
「ミンクのコートですよ」
(P160)

 これではびっくりするくらいじゃすまないぞ、と想像させるところがこのジョークのおもしろさですが、その国の文化や歴史などを知らないとよくわからないジョークがままあります。

神のみぞ知る

 ロバート・ブラウニングのもっとも難解な詩は『ソーデロ』である。
 その一行はロンドンの詩人協会でも見当がつかなかった。そこでブラウニングにじかにたずねてみた。
 ブラウニングは二、三度読んでから、肩をすくめていった。
「これを書いたときは、神と私しか意味がわからなかったが、いまや神しかわからない」
(P81)

 このジョーク、わからないではないけれど笑い出すほどではありません。しかし『ソーデロ』がどれほど難解な詩なのかよく知っていれば、きっともっとおもしろいのでしょう。

パトロン

 スペンサーが有名な長詩『妖精の女王』を書いて、当時詩人のパトロンだったサウサンプトン伯のところへもって行った。
 伯爵は原稿を手にして、数ページ読むと、召使いを呼んで二〇ポンド渡すように命じた。
 さらに読み進んで、興奮のあまり叫んだ。
「あと二〇ポンドやれ」
 さらに読み進むと、また叫んだ。
「二〇ポンド追加だ」
 しかしついにたまらなくなっていった。
「あいつを戸外に抛りだせ。これ以上読んだら破産してしまう」
(P52)

 これもスペンサーがどういう人で『妖精の女王』がどれくらいすばらしい詩なのか知らないわたしには、ああそうなのか、というところです。
 当時の作家にはパトロンがついたようです。こんなのもありました。

心からの叫び

 文学者のパトロンとして知られたメルボーン卿は、包み隠しなく真実を吐露するので有名だが、これもその一つ。
「作家が死ぬことはよいことだ。そのときでもうそれ以上作品がふえることはないし、パトロンは彼と縁を切ることができるからだ」
(P37)

ノアの箱舟

 二人のスコットランド人の間で口論がはじまった。キャンベルとマクリーンが家系の古さについて天狗の鼻をきそったのだ。
 マクリーンは自分の一族は天地創造と共にはじまったのだから、キャンベル家の及ぶところではないと主張した。
 キャンベルは相手より少しばかり『聖書』の知識があったので、マクリーン家は洪水のまえからあったのかとたずねた。
「洪水だって! いつの洪水かい?」
「世界中の生き物を溺れさせ、ノアとその家族に家畜だけが生きながらえた洪水さ」
「馬鹿言うな! もちろん洪水以前からあったともさ」
「聖書にはノアの箱舟にマクリーンという名のものが乗りこんだとは書いてないな」
「ノアの箱舟だと!」と、マクリーンは軽蔑するように反ばくした。いったい自分の船ももたないようなマクリーンなど、聞いたことがないぞ」
(P62)

 スコットランド人といえばジョークでは「ケチ」が第一の特性ですが、これを読むと、家系自慢も得意のようです。

窃盗罪

 リチャード二世を廃し、ヘンリー四世を王位につけようとした意図で書かれた本が糾弾され、その著者と目されたヘイワードはロンドン塔に幽閉された。
 この本に腹を立てたエリザベス一世は、知的相談役のベーコンを呼び、その内容に反逆罪の要素はないか、とたずねた。
 ベーコンは、ヘイワードを安心させ、女王の立腹を冗談でまぎらわせようと考えて答えた。
「いいえ女王様、反逆罪については、そのような点があるとの意見は申しあげられません。しかし重罪を犯していることは間違いありません」
 女王はよろこんでこの意見をうけいれ、重ねてたずねた。
「どのようにして、またどの点で?」
 ベーコンは答えた。
「つまりコルネリウス・タキトゥスの文章および着想をたくさん盗んでおります」
(P32)

 これはむつかしい。イギリス人にとってリチャード二世、ヘンリー四世などの登場人物は、日本人にとっての豊臣秀吉、徳川家康みたいなもので、どういう関係にあるのかは自明のこととしてすんなり頭に入るのでしょうが、こちらにはそのあたりがさっぱりわからない。
 それでも話の筋はわかるが、最後のオチがやっぱりわからない。「タキトゥスの文章および着想」ってなんだ?

 タキトゥスは古代ローマの歴史家で、『ゲルマーニア』『年代記』などの著作がある。これくらいはおぼろげに思い出しても、内容は知らないから、それがどうしておもしろいのかわからない。
 そこでウィキペディアをみてみると、「著作はローマ帝国の衰亡を憂い、共和制時代の気風の回復を訴えるものが多い。」とある。気に入らない皇帝に対してはかなり辛辣なことを書いたらしい。つまり反逆罪にはあたらないと言いながら、やっぱり王様の批判は書かれているということのようだ。
 しかしそれでは、エリザベス一世は無教養だからわからなくてごまかされたということなのか。それともこれは上流階級の一般教養だから当然わかったけれど、タキトゥスの盗用ならしょうがないわね、と手を打ったということなのだろうか。
 どなたかおわかりでしたらご教示ください。

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