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2012年10月23日 (火)

週刊朝日と橋下市長

  週刊朝日橋下徹大阪市長の父親や親族を題材に連載を開始した佐野眞一ハシシタ 奴の本性」(2012年10月26日号)について、橋下市長は、同和地区に関する不適切な記述があったことなどを理由に抗議し、親会社朝日新聞の取材を拒否していた。

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 読んでみると、橋下市長に対する悪意に満ちており、文章が汚く品がない。今は廃刊になった『噂の真相』を思い出した。週刊朝日は、橋下市長に相当な敵意をもって喧嘩を売っているとしか思えない。

 表紙には「救世主か衆愚の主か」と書いてあるが、救世主の要素を検討しようという様子はない。「日本維新の会」の旗揚げパーティの描写からはじまるが、「テキヤの口上だった」「田舎芝居じみた登場の仕方」と作者の印象ばかり。タレント弁護士時代に見かけたときは、恐ろしく暗い目をした男だった。この男は裏に回るとどんな陰惨なことでもやるに違いない、とまで書くが、これも佐野がそう思ったというだけの話である。理由もなく橋下は悪いやつだと決めつけている。
 パーティの参加者への取材では九十歳になるという老人のわけのわからない言説だけを紹介して「いかにも橋下フリークにふさわしい贅六(ぜいろく)流のファシズムだと思った」と書いている。なんでこんな変わったじいさんが支持者の代表になるのか。そもそも贅六流のファシズムってなんだ?ファシズムには贅六流とか江戸っ子流があるのか。
 父親のことは、縁戚だという男がしゃべったことが書いてある。ヤクザだった。入れ墨をしていた。シャブやってる人間はすぐわかる。自殺する前には頭が半分狂っていた。しかしこの話の裏付けはない。指摘されれば、伝聞を書いただけで事実だとは書いてないと言うつもりか。

 なんのためにこんなことを書くのか。佐野は「初めに断っておけば、私はこの連載で橋下の政治手法を検証するつもりはない」という。橋下には確固たる政治的信条なんかない、ひたすら世情に阿(おもね)ったテレビ視聴者相手のポピュリズムがあるだけだ。だから橋下徹という人間そのものを解明するのだという。

一番問題にしなければならないのは、敵対者を絶対に認めないこの男の非寛容な人格であり、その厄介な性格の根にある橋下の本性である。
 そのためには、橋下徹の両親や、橋下家のルーツについて、できるだけ詳しく調べあげなければならない。
 オレの身元調査までするのか。橋下はそう言って、自分に刃向かう者と見るや生来の攻撃的な本性をむき出しにするかもしれない。そして、いつもの通りツイッターで口汚い言葉を連発しながら、聞き分けのない幼児のようにわめき散らすかもしれない。
 だが、平成の坂本龍馬を気取って“維新八策”なるマニュフェストを掲げ、この国の将来の舵取りをしようとする男に、それくらい調べられる覚悟がなければ、そもそも総理を目指そうとすること自体笑止千万である。
 それがイヤなら、とっとと元のタレント弁護士に戻ることである。

 しかし政治家を理解するために、その政策や手法、実績などを取り上げず、ひたすらルーツを探ると言って、オヤジはヤクザだった、いとこに殺人犯がいるという話を書き連ねてどうするのか。幼い頃両親が離婚して母子家庭で育ち、ろくに父親の記憶はないという橋下の性格や考え方を理解するのに、こんな話が本当に必要なのか。怪文書によるネガティブ・キャンペーンとどこが違うのか。
 週刊朝日の表紙には売り文句として「橋下徹のDNAをさかのぼり本性をあぶりだす」と書いてある。いつのまにかDNAの解析が進み、性格の悪さを遺伝させるDNAや政治家にしてはならないDNAが特定されたというのか。そういうハーバードの客員研究員の報告でもこの後に出てくるのだろうか。

 橋下市長が記者会見やツイッターで問題にしたのは次のようなことだった。。
・父親の出生地の実名をあげ、そこには被差別部落があると書いたこと。
・「橋下徹のDNAをさかのぼり本性をあぶりだす」、「血脈をたどる」、ルーツを探るということは、橋下の(下劣な)本性は(下劣な)血脈によるものだという、血脈主義・差別思想であること。
・父はヤクザで云々とか書いているが、怪しげな登場人物がそう言ったということを、裏付けもなしにそのまま垂れ流していて事実確認がされていないこと。

 これはそのとおりだと、わたしは思う
 さてこの後の展開がどうなるのか、興味津々でいたら、橋下市長から抗議されたら、週刊朝日はあっさり謝罪するとともに、二回目以降の連載中止を決めた。
 品のあるなしは別にして、この原稿が表現の自由のうちであるのかないのか、相手がどう反応するか、世間がどう感じるか、弁護士との相談とか、これだけの悪罵を投げつけるからにはいざというときの対応の検討を事前にしておくものだろう。こうなることを見通せなかったのか。
 週刊朝日は子会社で編集権は別だからと言っていた親会社の朝日新聞社も、広報部が「連載記事の同和地区などに関する不適切な記述で橋下徹・大阪市長をはじめ、多くの方々にご迷惑をおかけしたことを深刻に受け止めています。」とコメントを発表した。http://www.asahi.com/national/update/1019/TKY201210190469.html

 橋下市長の完勝である。

 今日、おわびの載った週刊朝日が発売になるらしい。前号はこの騒ぎで売り切れになった。今回の号もおわびで売れるんだろうか。だとするとのせられているような気もして買いにくい。

 先ほど本屋で立ち読みしてきた。
 「差別を是認したり助長したりする意図はありませんでしたが、不適切な表現があり、ジャーナリズムにとって最も重視すべき人権に著しく配慮を欠くものになりました。」ということで、「社として、今回の企画立案や記事作成の経緯などについて、徹底的に検証を進めます。」ということだった。まだ具体的な検証の中身はない。→http://publications.asahi.com/news/276.shtml

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