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2012年10月13日 (土)

あしたのジョーの町

 10月9日、長男の引っ越しの手伝いで南千住へ行った。

Dscf6934_3 これが長男がこれまで住んでいた賃貸マンション。
 入居したときは新築のきれいな部屋だった。7階だったので通路側からはスカイツリーができあがっていくのがよく見えた。
 岐阜から転勤するとき、現地確認のため東京まで往復するような暇はなく、不動産屋からのFAXと電話だけで決めた。勤務先の上野に近く、新築で間取りもそれなりのうえ、賃料が他と比べて安かったので、ここに決めたそうだ。

 ところが引っ越してみると、たしかに最寄り駅は南千住だが、一番近い交差点は「泪橋(なみだばし)」というのであった。この名前でわかる人にはわかるが、日雇労働者の町、いわゆる「山谷」の一角に位置しているのである。賃料が安いのにはちゃんとわけがあったのだ。長男は引っ越してからはじめて「山谷」という町のことを知ったらしい。
 

 われわれの若い頃は、高度成長を底辺で支える肉体労働者の町としてにぎわい、大阪の「釜ヶ崎」と並ぶ有名なドヤ街だった。革命の拠点にするんだと左翼過激派が入り込んでいたり、過剰な活気があふれていた町だった。(わたしは当時の山谷は知らないが、同じような環境の横浜の寿町には仕事の関係で出入りしていたことがある。)
 その後長期にわたる景気の後退もあって、今は労働者の町から高齢者の町になっていて、活気があるとは言いがたい。簡易宿泊所の中には、外国人バックパッカー相手のゲストハウスになっているところもあり、長男のところを訪れると、アジア系を含め外国人旅行者が歩いている姿をよく見かけた。
 長男が住んでいたようなマンションもいくつか建てられ、確実に町は変わりつつある。

Dscf6933ts_2Dscf6931_4 しかし、老人たちが昼間から車座になって酒を飲んでいる姿や道路脇で寝込んでいる姿もよく見た。
 泪橋の交差点には、こんな看板が立っている。「歩行者の寝込み 飛び出し横断に注意」
 看板にも驚くが、このすぐ近くで、実際に歩道から車道へ頭を突き出して寝ているじいさんを見かけたときにはもっと驚いた。病気で倒れているのかと思ったが、酔って寝ていただけだったようで、しばらくたったらいなくなっていた。

 泪橋と言えば、思い出すことがもうひとつある。「あしたのジョー」である。ちょうどわたしの学生時代、「少年マガジン」に連載されていて大人気となったマンガ。ある日山谷をモデルにしたドヤ街にあらわれた少年矢吹丈は、アル中の元ボクサー丹下段平に才能を見いだされ、プロボクサーの道を歩み始める…という話。

 ここにあった思川(おもいがわ)は、明治大正の頃に暗渠化され埋め立てられたそうで、上の写真のとおり泪橋は地名として残っているだけだが、マンガでは橋の下にボクシングジムを作っていた。そして「泪橋を逆にわたる」という名セリフがあった。

Photo_13

こんどは/わしと/おまえとで/このなみだ橋を/逆に わたり/あしたの栄光を/めざして 第一歩を/ふみだしたいと/思う
高森朝雄、ちばてつや『あしたのジョー5』講談社コミックス P72)

 こうやって書き写してみると、いかにもくさいセリフである。しかしこの原作者高森朝雄(梶原一騎)の大時代がかった臆面のないセリフや状況設定と、ちばてつやのソフトな画と大胆な構成がうまくかみあって、それこそ異常なまでの人気をうんだ。わたしも力石徹との対決がどうなるか、少年マガジンの発売を待ちかねた一人であった。

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 上は、リングで力石徹を死なせてしまったジョーが、 過去を回想しながら苦しむ場面。場所は玉姫公園である。(高森朝雄、ちばてつや『完全復刻版 あしたのジョー9』講談社コミックス P40)

 この玉姫公園へ行ってみて驚いた。公園中にブルーシートで包んでひもで縛った大きな荷物が置かれていて、その数、百個以上はある。そして、中ほどの空いているところでは囲碁や将棋をやっているのを、それぞれ数人が取り巻いてにぎやかに見ている。みんな老人ばかりで、二、三十人はいた。現在、この公園はホームレスの野営地になっているらしい。昼間なので荷物を縛って出かけている人も大勢いたのだろう。
 一般的には公園に老人たちが集まって遊んでいるのはのどかな風景であるが、そのまわりがブルーシート荷物だらけというのはかなり異様であった。通り抜けてみたが、さすがに写真は撮れなかった。

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 町の中を何度か歩いてみたなかで、玉姫公園が一番異様な雰囲気だった。他は、昼間から酒を飲んでいる老人の姿をよく見るのを除けば、おおむねあまりにぎやかじゃない下町というところである。

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 こんな商店街もあった。
 いろは会商店街。「あしたのジョーのふるさと」で街おこし、とがんばっているようだが、日本全国の商店街同様、シャッターが目立つ。

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 なんだかアニメおたくの「聖地巡礼」みたいになったが、長男が引っ越して、もうこの町へ来ることもないだろうから、ちょっと書いてみた。

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