« 甲子園ツアー3 有馬温泉 | トップページ | 甲子園ツアー5 薬師寺 »

2013年4月14日 (日)

甲子園ツアー4 唐招提寺

 甲子園の試合終了後、駅前で祝勝会をやってから(→甲子園ツアー1 遠軽がんばれ)、わたしは一人で奈良へ向かった。出発の前日、ちょっと思いついたのである。土曜日なので安いビジネスホテルはあいていなかったが、なんとか猿沢池近くの和風旅館がとれたので、試合の翌日は奈良観光を予定していた。
 そうしたら予定よりずっと早く祝勝会まで終わってしまったので、これなら半日余計に観光ができそうだからと、午後から奈良へ向かったのである。

唐招提寺Photo

 阪神の甲子園駅から近鉄奈良まで乗り入れている快速急行があった。ちょうどこの日から交通系ICカード(というのだそうだ)が全国で相互利用を開始したので、JR東日本スイカ(Suica)がそのまま使えた。便利になったが、交通費がどのくらいかかったか、よくわからなくなりそうだ。
 西大寺で乗り換えて西ノ京で降りて、まず唐招提寺へ。Dscf7323_2

 春休みの土曜日の午後なのに、道行く人が少ないのに驚く。鎌倉は平日でもここよりずっと混んでいる。ここはかの有名な唐招提寺薬師寺のある駅なのに。少ないからとても落ち着くし、景色ものんびりしている。途中にはこんな土塀が剥がれた破れ寺のような建物がある。

 どれくらい人が少ないかというと、唐招提寺の門をくぐってもこのとおり。静かにゆったりと拝観できる。正面が金堂である。

Dscf7330

 そしてこれが、金堂のエンタシス(柱の中央部がふくらんでいる)の柱。右が戒壇である。

Dscf7332_2 Dscf7334

 天平の昔、仏教の戒を授けることができる僧を求めて遣唐使とともにに使いが送られた。日本からの要請にこたえて、高僧鑑真自らが承諾し、何度も渡航に失敗して、失明もしながら、荒れ狂う大海を越えてとうとう日本にやってきた(753年)。そして東大寺に戒壇を築き、聖武上皇らに戒を授けた。その後この唐招提寺を創建した。

Photo_3 この話を小説にしたのが井上靖の『天平の甍(てんぴょうのいらか)』である。高校生の時に読んだはずだが、内容は覚えていないので、帰ってから読み返してみた。

 おもしろい。文章に無駄がなくきびきびとしていて、余計な装飾がない。恋愛沙汰も登場人物の大げさな感懐などもない。荒れ狂う海の描写のほかは、おおむね坦々と話が進行していく中で、事態がどれほどたいへんなことだったのかを感じさせる。
 
 鑑真を日本に迎えようとした留学僧たちが主な登場人物で、実在はしたが、文書に名前が残っている程度らしい。どういう性格で、どう感じどう考え行動したかは無論作者の創作である。
 留学生には成績優秀で唐の朝廷に仕官した吉備真備や阿倍仲麻呂のような者もいれば、自分の才能に見切りをつけ、勉学よりはひたすら写経を行って、多くの経典を持ち帰ろうとする者や、唐人の女と一緒になって帰ることをあきらめる者や、遠く放浪の旅に出る者も出てくる。現代の留学にも通ずる話であるが、当時もいかにもありそうで、歴史の枠内に収まっているように思われる。
 
 
 最後に、唐に残った留学僧の一人から渤海経由で瓦屋根の飾りである鴟尾(しび)が送Dscf7351
られてきて、唐招提寺の甍になるという話が出てくる。これがつまり「天平の甍」であるのだが、わたしにはこのエピソードだけはちょっと不自然に感じられた。甍が送られてきたという事実なり伝説なりがあったのだろうか。主人公の普照が過去を振り返りつつ唐招提寺の甍を見上げるくらいで終わったほうがよかったように思う。
 写真がその鴟尾天平の甍である。

Dscf7338
 関東地方では例年より一週間ぐらい早く、ちょうどこの頃桜の満開を迎えたが、関西では咲き始めたというところで、早咲きの桜が、ところどころで見られた。天気も良く、のどかである。

 鑑真大和上御廟の壁もこんな状態で風情がある。気に入った。

Dscf7347  Dscf7348

 そして御廟の中。苔がしっとりとして、とても落ち着いた雰囲気である。

Dscf7345 Dscf7344

 ところがこの廟所の奥には塀があって、その向こうは中学校か高校なのだろうか、サッカーの練習でもしているようで、「行けーっ!」とか「おーっ!」とか、喚声がかなりやかましい。これでは鑑真大和上がゆっくりおやすみになれないではないか。ここまで、人が少なく静かでいいところだと感心していたのに、御廟がいちばんうるさいとは、ちょっと苦笑いであった。

|

« 甲子園ツアー3 有馬温泉 | トップページ | 甲子園ツアー5 薬師寺 »

窮居堂旅日記」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 甲子園ツアー4 唐招提寺:

« 甲子園ツアー3 有馬温泉 | トップページ | 甲子園ツアー5 薬師寺 »