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2013年7月 3日 (水)

J43 ヒトラー・ジョーク

 スターリンの次はヒトラーである。 『ヒトラー・ジョーク ジョークでつづる第三帝国史』(関楠生・編訳、河出書房新社、1980)という本から、本のジョークを見てみる。

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 わたしの若いころには第三帝国うんぬんという本はけっこう出ていて、ゲーリングやゲッペルスの名前も聞いたが、最近あまり聞くことはない。
 だから時代の状況や政治状況などを説明してもらわないと、ジョークもよくわからない。この本はそのあたりをけっこうていねいに説明してくれている。
 ここに引用したジョークには、わたしにわかる範囲でちょっと注をつけてみた。
 
 

 

『わが闘争』を書いた人

 第三帝国の初期、ユダヤ人の子供もまだ同じ教室で――ただし、離された机で――授業を受けていたころのこと、ある教師が質問した。
「だれか、『わが闘争』という本を書いたのがだれだか知っている者は?」
 だれも手をあげなかったが、最後列にいたモーリッツ・ゴールトシュタインが立った。教師は、こんなことを知らなくてどうすると生徒たちをしかったあとで、こう言った。
「ではモーリッツ、だれが書いたか言ってごらん」
「ぼうくではありません、先生」と、モーリッツは両手を広げて請け合った。
 怒った教師はモーリッツの父親を呼んでお説教をした。父親のゴールドシュタインはよく考えたすえ、率直に言った。
「うちのモーリッツはなまいきなやつです。ずうずうしいかもわかりません。でも、嘘をつくような子ではありません。自分が書いたんじゃないと言ったら、たしかに書いたはずはないんです」
 しばらくしてから彼は、なだめるように付け加えた。
「でも先生、もし万一あいつが書いたんでしたら、どうか許してやってください。なんと言っても、子どものことなんで」(P48)

「わが闘争」

 一人の婦人が本屋に行って、小説『のらくら者の日記から』を欲しいと言った。
 本屋のおやじは求めに応じて、彼女にヒトラーの『わが闘争』を渡した。(P49)

逃げたライオン

 バルヌム・サーカスの開演中、一頭のライオンが逃げ出して観客席に飛び込んだ。お客はいっせいに逃げようとした。そのとき。突然一人の若い男が飛んで行って椅子をつかむなり、ライオンの頭を一撃して打ち倒した。
 観客はその英雄を賞め称え、新聞記者が質問した。
「お名前は?」
「モーゼス・レヴィです」
 次の日、「突撃者」の第一面にでかでかと次の見出しが躍った。
「鉄面皮なユダヤの豚が。高貴なけものを打ち殺した」(P104)

(注)名前からユダヤ人だとわかったとたん、英雄が…

シラー

 俗に「きんきらきん」とあだ名されるナチの高官が、フランスの占領地区を旅行していた。一等の車室にはいって行くと、一人だけ客がいたので、あいさつした。
「ハイル・ヒトラー!」
 相手は答えた。
「ボンジュール!」
 腰をおろしたナチ党員は、相手がフリードリヒ・シラー著のドイツ語の本を読んでいるのを見た。
「『ハイル・ヒトラー』というドイツ式のあいさつにあなたは知らん顔をしたが、偉大なドイツの国民詩人の本をお読みなんですな?」
 そのフランス人は微笑しながら答えた。
「私は、シラーは国民的ではなくて国際的な詩人だと考えています」
「どうしてです?」とナチ党員は尋ねた。
「なに、簡単なことですよ。あなたが彼の作品をご存じだったら、シラーが国際的だということを認めないわけにはいかないでしょう。彼はすべての国民のために作品を書いているのですよ。イギリス人のためには『メリー・スチュアート』、オランダ人のためには『オランダ独立史』、スペイン人のためには『ドン・カルロス』、イタリア人のためには『メッシナの花嫁』、スイス人のためには『ヴィルヘルム・テル』、そしてわれわれフランス人のためには――『オルレアンの処女』です」
 ナチ党員は怒って叫んだ。
「ドイツ人のためには何も書かなかったとでも言いたいのですか?」
「いや、そんなことはありません」と、フランス人は言った。「ドイツ人のためには『盗賊』を書いたではありませんか」(P139)

(注)『盗賊』は日本では『群盗』と訳されている作品のこと。

書籍市場からの新刊案内

 
 アードルフ・ヒトラー著『わが電撃戦の最初の三年間』。以下続刊。先発書店、ベルリン―ミュンヘン。
 ヘルマン・ゲーリング著『馬子にも衣装』――征服と勲章に関する論文。著者による自画像多数所載。「優雅な世界」社。
 アルフレート・ローゼンベルク著『切れ長の目をした北方人種』。なぜわれわれは日本軍の勝利を喜ぶのか? 万人のための便覧。ナチ党出版局、ベルリン。
 ベニト・ムッソリーニ著『わが生涯の事業』第一巻。いかにしてローマ帝国を分捕るか? 枢軸書店、ローマ―ベルリン。
『わが生涯の事業』第二巻。いかにしてローマ帝国を失いしや? 近刊。
 グスタフ・フレーリヒ著『女と愛と平手打ち――映画界の舞台裏から』。大臣ゲッペルス博士の序文。ウーファ書店、ベルリン。
 (「エーリカ」第六一号、一九四二年四月)(P182)

(注)「エーリカ」は地下運動の雑誌だそうだ。
 ヘルマン・ゲーリングは国家元帥でナチスのナンバー2だった。どうも勲章をいっぱいつけてで着飾るのが好きだったらしい。
 アルフレート・ローゼンベルクはナチスの幹部で、民族論に関する著書がある。ユダヤ民族以外には寛容であったらしい。
 ムッソリーニは、戦争になるとからきしだめだったとジョークのネタになっている。当時のイタリア軍は相当弱かったらしい。
 グスタフ・フレーリヒは俳優・映画監督。SFの古典映画「メトロポリス」1927に主演している。妻はリダ・ヴァアロヴァという女優で、ナチスの宣伝相ゲッペルスとのスキャンダルがあった。このためフレーリヒがゲッペルスを殴ったという噂が当時あったらしい。実際に平手打ちをくわせたのは妻のリダに対してだったという。

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