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2014年1月17日 (金)

『大前研一敗戦記』

 東京都知事選は1月23日告示で2月9日が投票日。この1月14には細川元首相が立候補を表明というニュースが流れ、にぎやかになってきた。
 こんなHPができていた。→http://tokyo-tonosama.com/
 若い者にまかせてみたものの、黙って見ていられなくなって、とうとうご隠居さんたちがまた出てきたというところだ。
 しかしご隠居さんたち、口先はともかく足腰は大丈夫だろうか。しっかりしていないと、足元をすくわれたり、すぐコケたりするんじゃないか、心配だ。
 
 

 1995(平成7)年の都知事選に立候補し敗北した大前研一には『大前研一敗戦記』(文藝春秋、1995)というおもしろい本がある。
 青島幸男が170万票を集めて当選した年で、自民党等が推薦した石原信雄が123万票で二位、大前は42万票で四位だった。
 大前はこのあと自分で作った「平成維新の会」から参議院にも出馬したが、そちらも落選し、この本を書いた。

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 アマゾンの内容紹介には 「私財六億円を失い、財界人は手の平を返し、プライドは泥まみれになった。ビジネスから政治の世界に飛び込んだ著者が書き下ろす体験的政治論。」とある。
 選挙の敗北を真摯に受け止めて自分を見直し、さらに選挙制度、マスコミ、政党や政治家の問題点を客観的に述べていて非常に説得力があり、かつおもしろい。
 選挙戦の内幕話もある。ドクター中松が立候補してきて、大前、青島、上田哲の三人を呼び集め、「四身一体」で四人同時に知事になろうという、わけのわからない提案をしてみんな閉口したとか、青島幸男の言ったこと、岩国哲人の経歴の実態とか、とてもおもしろい。
 中でも印象的だったのは、選挙応援をしてくれた加山雄三が、敗北後に「今日は黙って俺の言うことを聞け」と言って、大前に語ったということばである。
「俺は選挙中、お前には何も言わなかった。あんなに一生懸命やっているのを見ると何も言えなかった。だけどね、あんた滑稽だよ」
「あんたの政策は素晴らしい。僕なんかが聞くとその通りだと思う。でも、あんたはまったく『底辺』の人々の心に触れていない。おまえさんの言うことはやっぱり『底辺』が唸るもんじゃねえ。ごく一部の知識人がなるほどと思うだけだ。僕は吉本興業にも、どこのプロダクションにも属してこなかった。それで35年間歌を歌って食べてきた。その意味では、大衆が何を考えているのか、自分が掴まなかったら、すぐに客がこなくなる。だから、あんたより大衆が考えていることには敏感だ」
「あんたがなぜ滑稽なのかというとね、全部1人でやろうとしているからだ。明治維新を見なよ。このまま行ったら日本は欧米列強の植民地になる、大変なことになるという共通認識があった。その危機感が皆にあって、皆がそれぞれの思いで、尊皇だ、いや攘夷だ、いや開国だと百家争鳴した。百家争鳴したけれど、そういう意見の違いを乗り越えて、このままいったら日本は植民地になるという危機意識をバネに、力をあわせてやりとげた。それを後の人が『明治維新』と呼んだだけだ。それと比較すると、大前さんは、全部自分で分析して、全部自分で答えを持ってて、何聞いてもわかってて、そして一人で興ってもいないのに、『平成維新』と言って、『平成維新です。みんなやりましょう』とやっている。それじゃあピエロだ。」
「『平成維新』なんて言葉はやめちまえ。基本的にはね、もっといい国作ろうと。日本というのはこんなもんじゃねえはずだと。我慢できないぞと、こういう言葉で言えば、一般の底辺の人にもわかりやすい。今の日本、家庭をもっと大切にしよう。もっといい国作ろう。それで、その結果として、皆が集まってきてやったものが、後の人が『あれは平成維新だったな』と言ってくれるんじゃない。一回呼びかけかた変えて、『平成維新』だなんだって答えがわかっているようなことを言うのをやめなよ」(P100)

 このあたりについて、大前は「終わりに」でこう書いている。

 思えば、私が選挙に出る前、つきあっていた人というのは日本のごく一握りの人たちだった。財界人、政治家、ジャーナリスト、これらの人々の世界が全ての世界だと考えていた。しかし、むしろこのサークルは一般の国民からすれば、非常に特異な特権的サークルだった。『文藝春秋』や『日経ビジネス』で、自分の言説は広く受け入れられていると早合点していたのだが、六十万の雑誌というのは、九千万人の有権者から見れば、芥子粒みたいなものだった。そのことが、二度選挙に落ちてわかった。
 「敗戦記」を書いてみようと思ったのは、その発見を正直に書くことで、これまで語りかけてこなかった人たちにも、私の声を聞いてもらいたかったからだ。(P284)

 この本は現在品切れで、古本でしか入手できない。ネットでは、大前研一の本の中で一番面白いという評価もあるくらいなのに、ずっと文庫にならないのは、大前氏本人の意向なのか、それとも出版社が何か問題があると考えているのだろうか。
 掲載されている当時の政策提案なども含めて「おもしろくてためになる」、とてもいい本だと思う。今からでも文庫化して、広く読まれるようにしてほしい。

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