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2014年3月 9日 (日)

『図書館の死体』

 『図書館戦争』シリーズを紹介したので、ハヤカワ文庫の図書館長ジョーダン・ポティートのシリーズも紹介する。
 『図書館の死体』、『図書館の美女』、『図書館の親子』、『図書館長の休暇』の4冊が出ている。
 タイトルの「図書館」云々は原題にはない。主人公が図書館長なので舞台として図書館が出てくるものの 特に古本の秘密を追いかけたりはしないので、「古本の出てくる推理小説」とは言えないが、図書館つながりであげておく。

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 ジェフ・アボット図書館の死体』(ハヤカワ文庫、1997)のカバーにはこうある。

若くして図書館の館長を務めるジョーダン・ポティートは、わが身の不運を嘆いた。自分の図書館で殺人事件が起き、その容疑者にされたのだ。被害者はジョーダンや彼の母親などの名前を記した奇妙なメモを持っていた。真相を探るため彼は調査を始めるが……複雑な謎と感動的なラストシーン。アガサ賞、マカヴィティ賞の最優秀処女長編賞を受賞した話題作。

 主人公は、アルツハイマーの母親の面倒を見るため、東部ボストンで順調にいっていた仕事をやめて、故郷テキサスの田舎町へ帰ってくる。田舎町なのでインテリの職場としては図書館くらいしかなく、給料も安い。日本でも最近よく聞くような話だ。
 アメリカの田舎町の図書館には、住民による図書委員会という組織があって、それなりに力を持っているらしい。殺されたのはその図書委員の一人で、バプテストの狂信的な信者の中年女性。殺される前日、主人公は、D・H・ロレンスの『恋する女たち』は猥褻だから図書館から追放しろと主張する被害者と激しく争ったばかりだった。
 残されたメモには何人かの名前と、それぞれに関連づけられた聖書の引用句が書かれていた。殺人の真相を探るため、それらの人達を調べはじめた主人公は、聖書の引用句に呼応する、彼らの隠された過去や生活を次々に知ることになり、やがて自らの出生にかかわる秘密とも向かいあうことになる…

 というわけで、なかなかおもしろい推理小説である。
 架空のテキサスの町ミラボーは、大きな産業のない、緑豊かなひなびた小さな町で、車ならすぐ一回りしてしまう。都会とは違い人間関係が濃密で、誰が何をしているのか、みんなが知っている。日本の田舎町と同じようなだ。
 小説を読む楽しみのひとつに、行ったことのない町の雰囲気を想像しながら味わうということがある。アメリカというとまず思い浮かぶのは大都会だけれど、田舎にはこういう町もあるんだと、楽しむことができた。
 こういう楽しみはそれなりの情景描写がないと味わえない。最近紹介したライトノベル調のものはみんなストーリーの展開に忙しく情緒に欠けるようだ。これは普通の推理小説で、そんなに詳しい描写があるわけではないれど、やっぱりラノベよりこちらの方がいい。

 

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 2冊目の『図書館の美女』(ジェフ・アボット、ハヤカワ文庫、1998)までしか読んでいない。
 静かなミラボーの町に、突然、犬小屋や郵便受けが連続して爆破される事件が発生し、図書館長のボストン時代の恋人が不動産会社の社員として、リゾート開発のための地上げにやってくる。そこへ開発を阻止しようとする環境運動家も乗り込んできて、町を二分する大騒ぎになる。そして不動産会社の社長が死体で発見される…という話。
 リゾート開発対環境運動家と、ここでも日本にもあるような話だと思わされる。アメリカを追いかけて、同じような問題を日本もかかえるようになったということか。

 原題は”The Only Good Yankee"で、これは"The only good Yankee is a dead Yankee." 「死んだヤンキーだけがいいヤンキー」=「ヤンキーにはかかわりたくない」という、アメリカ南部人の北部人への皮肉からとったものだそうだ。
 主人公はボストン時代、田舎者としてさんざんテキサス訛りをからかわれたという話も出てくるので、対抗して北部人をからかうのはわからなくもないが、この言葉、もとは”Yankee”ではなく、”Indian”だったらしい。
 そうなると人種差別、人種侮蔑の話になってきて、アメリカ人という奴は…と言いたくなるが、まあこの本にそんなことが書いてあるわけではない。これも楽しく読んだ。

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