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2014年4月21日 (月)

『古書店主』

 マーク・プライヤー『古書店主』(ハヤカワ文庫、2013)は、文句なしの「古本の出てくる推理小説」「古本ミステリ」だ。カバーの売り文句は次のとおり。

【カバー】露天の古書店が並ぶパリのセーヌ河岸。そこでアメリカ大使館の外交保安部長ヒューゴーは、年配の店主マックスから古書を二冊買った。だが悪漢がマックスを船で連れ去ってしまう。ヒューゴーは警察に通報するが、担当の刑事は消極的だった。やむなく彼は調査を始め、マックスがナチ・ハンターだったことを知る。さらに別の古書店主たちにも次々と異変が起き、やがて驚愕の事実が!有名な作品の古書を絡めて描く極上の小説。

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(以下ネタバレあり。ご承知を)

 上記のとおり、なじみの店主の失踪を調べていくうちに、店主が生き残ったナチスの残党を狩り出すナチ・ハンターだったことが判明し、その他にも何人かの古書店主の失踪が判明する。買ったアルチュール・ランボーの『地獄の季節』は思いがけない稀覯本で、高額でオークションにかけられる。売ってくれなかったクラウゼヴィッツの『戦争論』には謎の書込があった、と古本がらみで事件が展開していくのが古本好きにはうれしい。もちろんその他にも美人ジャーナリストとかパリ警視庁、ドラッグをめぐるギャングたちがにぎやかにからんで、事件は展開していく。
 しかし、ちょっと主人公がスーパーマンすぎるというか、都合良くCIAの友人があらわれたりして、話が弱い。アメリカの小説のせいか、パリの警視庁はたよりないことになっている。
 何より気になったのは、このセーヌ河岸の古本屋組合が、ギャングに乗っ取られていたという話である。いくら金があるからといって、古本屋の経験もない元ギャングが組合長に就任して事務を遂行したり、失踪した店主に代わってチンピラが商売したりできるものだろうか、ということだ。作者はちょっと古本屋という商売をなめているのではないか。
 しかもギャングがここを乗っ取って、ドラッグ・マーケットにしようとするというのだから、そんなことができるものか、けしからん、と、最初のうちは楽しみながら読んだものの、ちょっと不満の残る作品だった。
 

 以下は、そのパリのセーヌ川沿いの古本屋、いわゆる「ブキニスト bouquiniste 」の写真である。こんな開けっ放しのところで、ドラッグ商売が成り立つものか。現在、二百数十軒あるらしいが、それを全部傘下に入れる必要があるのか。そんな大々的にやったらすぐ見つかるじゃないか。

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 それに、ブキニストの人たち、けっこうゆったりと商売をやっているようで、開いていない時間がけっこうあるし、夕方には店じまいするようだ。雨が降れば当然休みである。儲けのために生死もかけるような厳しいドラッグ商売とは肌が合わないだろう。

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 こんなふうに、川べりの石塀の上に、ブリキの蓋のついた木の箱が乗っかっていて、蓋を開ければ店が開けるようになっている。
 ここに本が入れっぱなしになっているらしいが、これを見てわたしは、中の本が心配になってしまった。雨や盗難はよけられるとしても、日本でこんなことをやったら、高温多湿の夏には、本がすぐダメになってしまう。パリは日本と違って、夏場は湿気が低いそうだが、それでも本にいいとは思えない。川の上だよ。まあ、高価な本は持って帰るんだろう。

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 店を開くとこんな感じ。前に立っているのはブキニストでもドラッグの売人でもない。わが友人、T局長である。 

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