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2014年7月21日 (月)

筒井康隆講演会

 7月5日は、東京ビッグサイト筒井康隆の講演を聴きに行った。東京国際ブックフェアの一環の行事である。
 
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 ブックフェアの方を一回り見てから、30分前に講演会場に行ったら、もうかなり客が入っていて、真ん中より後ろの列になった。演者の顔は小さくしか見えず、後ろの大きなスクリーンで見る。2,500人以上の申し込みがあったので、モニターだけの第二会場も用意されたそうだ。けっこう若い人がいる。筒井康隆の人気いまだ衰えず、である。
 
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 演題の「「読書」の極意と掟」は、勝手に決められて印刷までされてしまった。だからこれでやるしかないが、真面目な、おもしろくない話になってしまう。もっとおもしろい話がいくらでもあるのに、と始まった。
 この手の講演会では、事前に提示された演題とは無関係な話をする人も多いのだが、筒井康隆は意外に真面目なんだな、とちょっとおどろいた。なにしろわたしは若い頃この人のハチャメチャSFにしびれていた口である。
 本当に真面目な話で、
<文学の読書ということなら、まず世界文学全集を読みなさい。これはという作家に出会ったら、その人の個人全集を読みなさい。その人にあきてきたら、それは成長したということだから、次に進みなさい。現代文学の最先端の難解でとっつきにくいものは、いろんなものを相当量読み込んでからでないとわからない。SFは今やあらゆるジャンルに拡散した。SFも読んでほしい。>
 というような趣旨だった。わたしのおぼろな記憶によるので間違っていたらごめんなさい。悪い話ではなかったが、もっとおもしろい話があったと言われると、そちらの方を聞きたかったと思ってしまう。
 
 講演は30分もかからずに終わり、その後、今年雑誌に発表した「奔馬菌(ほんばきん)」という自作の短篇の朗読があり、こちらの方がずっと長かった。
 筒井は若い頃は演劇をやっており、作家として有名になってから演劇活動も再開して、NHKの大河ドラマにも出演したことがある。
 だからうまい。重厚な低音で、威厳があってえらそうだ。筒井は気を悪くするかもしれないが、中尾彬を思いだした。
 朗読された話は、午後三時半や五時半はいいが、四時半という時間は許せないから退治に行く、というよくわけのわからない前衛的な話からはじまった。途中で作者が顔を出して原発事故の話をしたり、昔自分が空想で書いた話が現実の世界で実現してしまって恐怖を感じているという話をしているうちに、気象改造装置の発明者の家族の話になって、台風を中国方面へ追いやってしまうとか、ハチャメチャっぽい話に観客みんなゲラゲラ笑っているうちに終わった。結局四時半がどうなったのか、さっぱりわからないままだった。(これもおぼろな記憶に頼って書いているので、違っていたらごめん。『新潮』2014年6月号に掲載されたそうだから、興味のある方はそちらをどうぞ。)
 わたしが大好きだった昔のハチャメチャSFに通じるところがあって非常に楽しかった。
 
 筒井の小説が現実化しているというのは本当だ。昔こんなことありえないだろうと笑って読んでいた話が実際に起こってしまって、まったく笑えなくなったりしている。
 朗読に出てきたのは、監視カメラで四六時中監視されるようになるという話や、喫煙者の取り締まりがとんでもなく厳しくなるという話、日本と中国・韓国の関係が危うくなるというような話で、おおむねそのとおりになってしまっている。
 この他にも、芸能界で一番売れている人間が世の中で一番尊敬され重要な人物とされる社会、というのも、今ほとんどそうなっているような気がする。その気で昔の小説を探せば、空想が本当になっている話はまだいろいろ出てくると思う。筒井康隆全集を引っ張り出して読みはじめると他のことができなくなるだろうからやめておくが、筒井が当時の小さな傾向を極端に拡大し戯画化していたものが実現してしまっている、それも戯画化に近い醜悪なかたちで、ということだ。 
 
 つい先日は「号泣県議」の事件というか、ともかく衝撃の動画が全国に流れた。
 あれを見た時も、ゲラゲラ笑いながら、ああまた筒井康隆の世界の登場人物が現れたと思った。直接どの作品のどういう人物に当たるというわけではないが、ああいう、性格が極端で、感情が高ぶると何を言っているのかわからなくなる人物は、おなじみの登場人物だった。本当に、しかも県会議員でいた、というのは驚きだった。
 しかしこの人、地方議会の制度上の問題点を広く全国的にあきらかにした。それもたった一人で、自分を犠牲にしながら、である。こういうのを「トリックスター trickster 」というのだろうか。
 これで全国の地方議会があれこれ詮索されることになるが、そうなるともっといろんな驚きの人が出てくるかもしれない。少し期待しよう。
 
 終了後、駅までの途中、「AKB48握手会場→」という看板を見かけた。翌日の新聞には、傷害事件により中止されていた握手会がこの日ビッグサイトで再開された、とあった。近くでやっていたらしい。
 
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 お台場とかレインボーブリッジとか、このあたりの景色を見るたびに、子供のころ手塚治虫のマンガで見た未来世界が実現しているのを感じる。そしていつも思う。あと、鉄腕アトムが空を飛んでいてくれれば……
 
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