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2015年1月15日 (木)

映画「清須会議」

 昨年12月にテレビで放映された映画「清須会議(きよすかいぎ)」を見た。これがとてもおもしろかった。
 清須会議は、天正10年(1582)実際に開かれた、織田信長死後の織田家の後継問題と領地再分配に関する会議である。この会議の後、それまで織田家の重臣筆頭であった柴田勝家の勢力が低下し、明智光秀を討った羽柴秀吉が家中での実権を握るようになった。秀吉が天下取りの第一歩を踏み出した会議で、対立した勝家は、翌年の賤ヶ岳の戦いで秀吉に破れた。

 小説「清須会議」(三谷幸喜(みたにこうき)、幻冬舎文庫、2013)のカバーにはこう書かれている。

信長亡きあと、清須城を舞台に、歴史を動かす心理戦が始まった。 猪突猛進な柴田勝家、用意周到な羽柴秀吉。情と利の間で揺れる、丹羽長秀、池田恒興ら武将たち。 愛憎を抱え、陰でじっと見守る、お市、寧、松姫ら女たち。 キャスティング・ボートを握るのは誰なのか?五日間の攻防を現代語訳で綴る、笑いとドラマに満ちた傑作時代小説。

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 この小説を三谷幸喜自身の監督で映画化したのが映画「清須会議」である。映画を見た後、小説も読んでみた。登場人物の現代語のモノローグで話が展開していく。おもしろいけれど、はじめから舞台化あるいは映画化するつもりで書かれたもののようだ。映画の方がおもしろい。

 軽快なテンポの喜劇として話が進行するので、史実がどうこうという問題ははじめから無視して見られる。なにしろ後継者選びの一環として、リレーの旗取り競争(小説ではイノシシ狩り)が行われたりする。
 基本のストーリーは、愚直で純朴な武人柴田勝家(役所広司)は、狡猾で手練手管にたけた羽柴秀吉(大泉洋)に丸めこまれ、織田家のナンバー2で勝家の親友丹羽長秀(小日向文世)も、織田家の将来や天下の経営を考えたら、そういう点では凡庸な勝家より秀吉に加担せざるをえなくなるという話。これにお市の方(鈴木京香)の秀吉への恨み(夫浅井長政を殺された)と勝家・秀吉二人のお市の方への思慕がからむ。
 冒頭の本能寺から光秀の死へと、テンポよく進行して、ずっと余計な字幕やナレーションは入らないが、状況はよくわかる。
 なにより主だった登場人物のセリフの切れがよく,、明瞭なのが気持ちいい。言っていることがよくわかるというのはあたりまえだけれど、そうではない俳優もけっこういる。主役の役所をはじめ舞台での経験が豊富な役者が多いからだろうか。
 セリフと言えば、なぜか秀吉の妻お寧(中谷美紀)はじめ秀吉の一家だけは名古屋弁でしゃべっていた。(これが尾張出身のわたしが合格を出してもいいくらいのできである。よくがんばりました。)勝家も丹羽長秀もまわりにいた前田利家たち登場人物のほとんどが尾張の出身なんだから、本当はみんな名古屋弁でしゃべっていたはずである。勝家・秀吉あこがれの美女お市の方だって名古屋弁だ。
 それを秀吉一家だけ名古屋弁にすることで、秀吉の成り上がりぶり、庶民性、土着性みたいなものが際だって感じられ、なるほど、そういう演出かと感心した。もっとも全員で名古屋弁をしゃべったら、名古屋周辺以外では話がわからず、全国上映ができなくなる。小説ではみんな標準語でつぶやいている。
 

 キャストが豪華だ。上記人物に加え、池田恒興(佐藤浩市)、織田信長(篠井英介)、織田三十郎=信長の弟(伊勢谷友介)、織田信雄=信長の次男、バカ殿(妻夫木聡)、松姫=信長の長男・信忠の妻(剛力彩芽)、黒田官兵衛(寺島進)、前田利家(浅野忠信)といったところが出演している。

Photo_10     (映画になったので文庫本についた二枚目のカバー)

 織田一族は、メーキャップもあってか、みんな顔立ちがよく似ていた。特に信長の篠井英介が、肖像画の信長に実によく似ていて驚いた。
 女優陣のメーキャップも凄い。お市の方鈴木京香は、眉を剃ってお歯黒をつけて出て来た。これが恐い。お歯黒も見慣れれば「陰翳礼賛」みたいな話になるのかもしれないが、見慣れないので、これで微笑まれると不気味で恐い。よくこの顔で出演した、鈴木京香えらい。
 映画にお歯黒で出演した最後の女優は、黒澤明の「椿三十郎」で家老の奥方役の入江たか子だという話があったが、鈴木京香は記録を更新した。そういえば黒澤の「蜘蛛巣城」の奥方の山田五十鈴もお歯黒をしていて恐かった。
 松姫剛力彩芽は、眉を剃った結果、誰だかわからない顔になってしまったのがおかしい。
 お寧中谷美紀は、逆に眉を太く描いて、名古屋の田舎のおばさんを陽気に演じて、なかなかよかった。

 清洲城のまわりは青々とした田園が広がっていた。あんまり青かったから、あれはCGかもしれないが、その尾張平野の一角にわたしは育った。なんとなくうれしかった。この1月2日には、帰省ついでに、あまり感心していなかったコンクリート造りの清洲城を見に行った。
 というわけで、楽しみどころの多い、おもしろい映画だった。また三谷幸喜の芝居や映画を見てみようと思う。

 

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