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2015年6月29日 (月)

J68 中国の古いジョーク4

 本が出てくる中国の古いジョークは前にも紹介した。(→33 中国の古いジョーク34 中国の古いジョーク2J58 中国の古いジョーク3
 そのとき、あまりおもしろくないうえ、解説がないとわからないので載せなかったものを、やっぱり紹介しておくことにした。

 まず駒田信二編訳『中国笑話集』(1978、講談社文庫)から。

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千字文    笑海叢珠

 河伯(かはく)(川の神)が宴席を設けて、竜王を招いた。
「これはこれは、遠路わざわざお越しくださいまして、まことに光栄に存じます。どうかご遠慮なくおくつろぎくださいますよう」
 と河伯が挨拶をすると、竜王は、
「このたびはお招きにあずかって、まことにかたじけない。ところで、お宅の酒は味がうすく、腹が脹(は)るばかりで、いっこうに酔いがまわってきませんな」
 といった。
「そうおっしゃるところを見ると、竜王さまは『千字文』をお読みになったことがないようで……」
「それはどういうことかな」
「『千字文』にはちゃんと、こう書いてございます。『海鹹河淡』(海は塩からく河は淡し)と」(P269)

 

 『千字文』というのは、中国で漢字の手習いの手本にされた長詩で、南朝の梁の時代、6世紀のはじめごろできたらしい。
 四字を一句として、同じ文字を使わずに、千の文字からなっている。
 ウィキソースによれば出だし及びその日本語訳はこうである。

一の一(1~18)   
天地玄黃 宇宙洪荒   天は玄(くろ)く地は黄色 宇宙は広く広大無辺
日月盈昃 辰宿列張   日月のぼり傾き欠ける 星や星座が並び広がる
寒來暑往 秋收冬藏   寒さが来れば暑さが去って 秋に穫り入れ冬に備える
閏餘成歲 律呂調陽   あまりの年は閏年(うるうどし)とし 調子笛吹き日月ただす
雲騰致雨 露結為霜   雲が起これば雨をもたらし 露が凍れば霜柱立つ
金生麗水 玉出崑岡   金を産すは麗水(れいすい)の岸 玉を出すのは崑崙の山
劍號巨闕 珠稱夜光   剣は巨闕(きょけつ)天下一品 珠は夜光が至上最高
果珍李柰 菜重芥薑   珍重果実 あんずやまなし 重宝野菜 からしなしょうが
海鹹河淡 鱗潛羽翔   海は塩水河は淡水 魚は潜り鳥は羽ばたく
http://ja.wikisource.org/wiki/ja:%E5%8D%83%E5%AD%97%E6%96%87_(%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E8%A8%B3)?uselang=ja) 

 小話は、上の最後の行の「海鹹河淡」=「海は塩水、河は淡水」、だから酒がうすいんですよ、というわけだが、解説を読んでもやっぱりおもしろくない。
 そして、調べてみたら上記各行の8字目は全部陽韻の文字で、ちゃんと韻を踏んでいる。詩は韻が大事なのだ。
 日本の「いろは歌」は48文字だが、これは千字。子供もまずこの千字を覚えないといけなかったのか。

 次は『中国古典文学大系59 歴代笑話選』(松枝茂夫編訳、平凡社、1970)から。

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陳佗

 ある男、県知事に謁見したいと思い、知事の側近の者に、
「知事閣下は何を好まれますか」ときくと、
「『公羊伝(くようでん)』を好まれます」
 との答え。そこでそのあと知事に会い、知事から、
「君はどんな本を読んでいますか」ときかれると、
「もっぱら『公羊伝』を勉強しております」
 と答えた。すると知事はちょっと試してみようと思って、
「ではおたずねするが、陳佗(ちんた)を殺したのは誰でしたっけ」
 男は大分たってから答えた。
「わたくしが陳佗を殺すなんて、とんでもございません」
 知事はその勘ちがいを知って、こんどはからかっていった。
「君が殺さなかったとすれば、一体だれが殺したんでしょうな」
 男こわくなって、足袋はだしのまま逃げ出す。人にわけをきかれ、大声あげていった。
「たったいま知事閣下に殺人の事でお訊ねを受けたんだ。今後もう二度と顔出しは出来ない。大赦令が出るまではとても駄目だ」(P8)

 

 『公羊伝』というのは『春秋公羊伝』のこと。これは四書五経の一つの歴史書『春秋』の注釈書だという。内容はよくわからないが、この小話に出てくる陳佗は、春秋時代の陳の公子で、桓公の太子・免を殺して即位したが、蔡人に殺されたというようなことが書いてあるらしい。
 要するに、格好をつけて『公羊伝』を勉強しているといったものの、ほとんど読んでいないものだから、歴史的事件について聞かれているのに現に起こった事件かと勘違いしてしまい、「わたしじゃありません」と大騒ぎしてしまった、という話。

 これも解説されてもおもしろくないので、おまけに、丁秀山笑話三昧』(東方書店、1992)にあった本のジョークを二つ載せておこう。

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本を買う

 本屋で一人の客が、店員に、
「本を一冊買いたいんです。技術・科学書ではなく。内容も女性や億万長者のものでなく、もちろん、殺人や探偵、愛情、侠客(きょうかく)でないものを一冊推薦してくれませんか?」
 店員は客に本を渡しながら、
「これはどうですか?
最新の『全国列車時間表』」

  ――役に立つ本です(隠れたベストセラー)。
(P72)

 

時代遅れ

 ある宴席、若者がバカにした口調で、
「『論語』という本は、二千年も経っているので、とっくに時代遅れになって、役に立たない!」
 と言った。その日は、まさに晴天で、張教授は外の太陽を見ながら、
「そうかね! 太陽は何万年も経ったが、いまだに役に立っていますよ!」

  ――そうですよ! 役に立たなくても、古ければ古いほど値打ちが出るものだってある。<骨董品屋>。
(P114)

 

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