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2015年7月 6日 (月)

「駆込み女と駆出し男」

 7月2日、映画「駆込み女と駆出し男」を見てきた。

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 井上ひさしの小説『東慶寺花だより』を原案として作られたもので、男から逃れて東慶寺へ駆け込んだ女たちの物語である。
 医者見習いにして戯作者志望の主人公信次郎が東慶寺の御用宿柏屋を手伝いながら、寺に駆け込む女たちのさまざまな事情や人情に触れ、もめ事や秘密を解き明かしていくという連作短篇集。

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 映画は、短篇集の多くを材料として組み立てながら、小説にはない幕府の権力者鳥井耀蔵に対する抵抗と主人公の恋を主筋として全体をまとめている。
 小説を読んでいないとひとつひとつのエピソードがどういうことなのかわかりにくかったかもしれない。小説を読んでいたわたしは逆に、あれ、こんな話だったっけと思わされるところもあった。井上ひさし「原作」ではなくて、「原案」となっているのは、そういうちょっとした筋の改変があるからか。「東慶寺花だより」の方がいいと思うのに、「駆込み女と駆出し男」という不粋なタイトルにしたのもそうためかもしれない。
 全体としてよくまとまっていて、テンポもよく、楽しめた。主人公信次郎(大泉洋)とキムラ緑子の江戸調長台詞の掛け合いや、随所に出てくる端唄だか小唄だか(わたしには区別がつかない)や、わらべ唄の類も意味はよくわからないけれど、雰囲気があっていい。

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 あっと驚いたのが、主人公の伯父さんにあたる柏屋の「源兵衛」が、実は伯母さんで樹木希林だったこと。無論原作では普通に男だったが、映画では「女」で「源兵衛」という名前で「主(あるじ)」であるという設定になっている。そんなことが? と思いながら、樹木希林が出てくると、そういうこともあったかもしれないという気になってくる。
 「駆込女」には当然、当時の横暴な男に対する女の抵抗という意味があった。映画でも東慶寺内での女だけの集団生活を描き、薙刀の稽古をさせたりして「女の力」を全面に出している(考証的には?だが)。その中で樹木希林はいつのまにか象徴的な存在になってしまっている。不思議な役者だ。 
 前に映画「清須会議」をみたときに、鈴木京香がお歯黒をつけていて、えらいと書いた。この映画では満島ひかりがお歯黒ででてきた。あまり違和感はなく、悪くなかった。これなら今後の時代劇ではお歯黒がそれほど珍しくなくなるかもしれない。
 もうひとりのヒロイン「じょご」を演じていた戸田恵梨香という女優は、名前も顔も知らなかったが、どうもどこかで見たことがあるような気がしてしょうがなかった。最後の方でようやく「すき家」の牛丼のCMではないかと思い当たった。帰って調べてみたらそのとおり。スッキリした。

 お寺の境内の画面がきれいだった。どこかでわたしの知っている東慶寺が出てくるかと思って見ていたが、ほとんどなかった。兵庫県姫路市の書写山円教寺(しょしゃざんえんぎょうじ)で主にロケをしたという。機会があったら姫路城とあわせて行ってみたい。

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 地元の映画館へ入ったとき、三十人くらいの入場者がいて驚いた。いつもは十人くらいだから、これは混んでいると言っていい。この映画、そんなに評判がよかったのか。
 前の週に「龍三と七人の子分たち」を見たときも同じくらいいたが、これはビートたけしの人気だろうと納得がいった。しかし「龍三と七人の子分たち」は残念ながら期待はずれだった。あっと驚くような面白さも、息をつかせぬような面白さもなかった。「駆込み女と駆出し男」の方がずっと面白い。

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 「駆込み女と駆出し男」の客は、いつもどおりわたしと同世代あるいはちょっと上くらいの客がほとんどだが、女性どうしの客が多かったのが特徴だった。いつもはもっと夫婦連れが多い。
 このあたり鎌倉は近いので、みなさん東慶寺になじみがあって見にきたのかとも思う。今さら「駆込寺」に興味があって来たわけではないと思いたい。

 

 

 

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コメント

姫路城や円教寺は〈007〉〈ラストサムライ〉の撮影にも使われました。
北野監督の映画に関しては、店主殿と全く同感です。

投稿: jiseizai | 2015年7月13日 (月) 14時52分

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