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2016年1月25日 (月)

海老名中央図書館1

 1月20日、神奈川県の海老名市立中央図書館へ行ってきた。

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 前に驚きの図書リスト驚きの図書リスト2で書いた武雄市の図書館と同じように、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が指定管理者になって運営し、蔦屋書店スターバックスが併設されている図書館が、昨年10月に海老名にも開館したのだ。この運営形態は最近「ツタヤ図書館」と言われている。

 武雄市の選書・廃棄本が問題になったせいだろう、海老名市では開館前に市議会で27年度の購入リストが取り上げられた。そこでは武雄市と同じように料理本が多すぎること、古い雑誌が入っていることや、さらに付録に眼鏡拭きやシリコン鍋、おろし金のついたムック本が入っていることなどが問題となった。最近こういう付録主体の本がよくある。
 鍋やおろし金を貸し出すにはそれなりの思想と覚悟がいると思われるが、そういうことを考えたわけではなく、ただ付録についていただけということらしい。本の内容を見ていないわけだ。こういうことをするから、またCCCに不要品を押し込まれたんじゃないかと思われてしまう。
 このリストは購入を見直すことになったが、その後も、蔵書にタイの風俗店案内が何冊かあることが問題になった。
 さらにネットで大きく取り上げられたのは、蔵書の分類だった。従来の図書館の日本十進分類法(NDC)とは違う、CCC独自の「ライフスタイル分類」という分類法によって本が配列されているのだが、それが素人が見ても明らかに間違いだろうと思われるものや、あまりにもおもしろいものがたくさんあって、マスコミでも取り上げられた。

 中でも有名になったのが旧約聖書の「出エジプト記」が、旅行記に分類されている、という一件だ。下記はネットにアップされた、海老名図書館の出エジプト記を蔵書検索したときの画面の一部である。

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 「ジャンル:旅行/海外旅行/アフリカ/エジプト」となっている。(現在は「人文/宗教/キリスト教/聖書」に訂正済) これを受けてネットでは「モーゼはツアーガイドか」とか「海を徒歩で渡るツアーだ」とか騒がれ、他にもあるだろうと海老名図書館の蔵書を検索しては、おかしな分類をアップすることがはやった。
 例えば
・『図説食人全書』(文化人類学系の本)→料理の本に分類
・宮沢賢治やまなし』(梨の実が出てくる童話)→旅行/国内旅行/甲信越・中部・北陸/山梨
・筒井康隆ベトナム観光公社』(ベトナム戦争が観光化するというハチャメチャSF)→「旅行/海外旅行/アジア/東南アジア/ベトナム」
・谷川俊太郎手紙』(詩集)→「住まいと暮らし/暮らし/行事・しきたり/手紙/手紙の書き方・文例集」
というわけで、海老名図書館の人には悪いけれど、ずいぶん笑わせてもらった。(ツイッターで「海老名分類」と検索するといろんな事例が見られる。)
 そのうちガルシア=マルケスの『百年の孤独』(小説)が焼酎に分類されているという、インチキの画面まで登場した。これはやりすぎで、嘘をついてはいけない。現在もまだ、遊びとして「海老名図書館風に分類してみる」という、大喜利みたいなことが行われているようだ。
・『魔女の宅急便』→流通
・『進撃の巨人』→プロ野球
・『薔薇の名前』→園芸
というようなもので、それなりに面白いけれど、実際にそう分類されていたもののような驚きはない。事実は小説より奇なり、だ。

 同じ本の上下で分類が違っているという話もあったけれど、基本は題名に地名が入っていれば「旅行」、食品が入っていれば「料理」に機械的に分類されているようで、内容を見て分類しているとは思えない。コンピュータで自動分類するにしたって、今どきこんな単純な分類をするものかと思う。

 なぜNDCではない分類を採用したかについては、海老名市は、市会議員からの質問に、「ライフスタイル分類」は「利用者の発見性」を重視した分類で、目的性なく来館しても新しい発見を提供できることを意識していると答えている。(→http://www.yoshiki-yamaguchi.com/Bunruihou.pdf)
 そして25項目の大分類に138項目の中分類、583項目の小分類を行っているとしているが、その内容は明らかになっていない。CCCから来ている館長は、これを「企業情報に関わるもの」、「民間企業ノウハウだ」として開示しないと言っているようだ。 
 おおまかな分類の考え方がわかって、どういう中分類、小分類があるのかわかれば探しやすいのだが、それが企業秘密というのはよくわからない。公開してどういう不具合があるのか、利用者の利便性はどうする。
 本の検索について、市の回答では、たくさん検索端末を設置してあるのでそちらでやってくれということになっている。端末は便利だけれど、配列だって重要だ。図書館で調べ物をしたことがない人たちばかりで運営しようとしているような気がする。
 発見性を重視するというのは、並んだ本を眺めているうちに思いがけない本に出会う、ということだろうが、わたしの経験では、それは日本十進分類法で並んでいる本棚を眺めていてもよく起こることだ。蔦屋書店の経験をもとにした、買うつもりが無かった客にも買う気を起こさせるような展示・配列用の分類があるとしても、それは売れ線の本を中心に並べて、売れ線の本に出会うというだけの話になってしまわないか。
 利用者の目を引くことより、蔵書の管理・検索がきちんとできることの方が、図書館としては重要ではないか。

 ということで、どういう図書館ができたのか見に行ってきた。その話は次回。

 

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