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2017年2月 6日 (月)

カオハガン講演会

 2月4日(土)、「2050年のカオハガン島への望み」という講演会に行ってきた。カオハガン島はフィリピンのセブ島のそばにある小さな島で、日本人の崎山克彦さんが買い取って、美しい自然の中で住民と一緒に楽しく暮らしていることで知られている。島での生活を書いた崎山さんの著書『何もなくて豊かな島』(新潮社、1995)は、発売当時ベストセラーになった。

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 わたしは週刊誌の巻頭カラーグラビアに紹介されたきれいな島の姿に驚き、この本を読んでとても感動した。
 そして宿泊ツアーがあるのを知って2001年にカオハガン島を訪れた。本のとおりの小さなかわいい島で、緑の林、白砂の浜辺、エメラルドグリーンに透き通る珊瑚礁の海、点在する家、どれもみな本当に美しかった。
 だからなつかしく、また、その後や今後の話を聞こうと講演会へやって来た。
 会場は横浜の本郷台にある「あーすぷらざ」という、いったい何をするところなのかよくわからない施設。正式名称は「神奈川県立地球市民かながわプラザ」というそうだが、正式名称を聞いてもわからないのは同じだ。役所が率先してこういうわけのわからない名前をつけたがるのは困ったものだ。「文化会館」「文化センター」と言ってくれればわかるのに。

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 カオハガンの展示もあわせて行われており、島の写真や島の特産品であるカオハガン・キルトがたくさん展示されていた。

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 講演会のタイトルは「2050年のカオハガン島への望み」だが、話の大半は、島で暮らし始めてからこれまで島の住民たちとどんなことをやってきたかという話だった。わたしは崎山さんの本は何冊も読んでいるので特に驚くような話はなかったが、島を訪れたときのことを思い出しながら楽しく聴いた。
 現況などについては、カオハガンのオフィシャルサイトもある。
カオハガン島オフィシャルサイト

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 崎山さんがえらいのは、この南海の楽園ともいうべき島を手に入れても、法的な所有権はないが以前からそこに住みついていた三百人あまりの住民を追い出そうとしなかったこと。できるだけ彼らの暮らしをこわさないように一緒に生きてきて、現在島民は六百人以上になっているそうだ。
 日本人がこんなところを手に入れたら、崎山さんも『南海の小島カオハガン島主の夢のかなえかた』(2000、講談社)に書いているように、まず考えるのは自然の一部を切り取って囲い込み、リゾートにして金を儲けることだろう。原住民は安い労働力として使われるが、現地の暮らしとの交流はない。
 あるいは最近はあまり聞かないが、昔「シルバー・コロンビア」計画というのがあって外国の安い労働力を使って日本人高齢者のための居住区をつくるという話があった。この場合も居住区は頑丈な塀で囲われて現地の暮らしとは隔絶される。カオハガンの帰りにセブ島でこの種の施設を少し見て来たが、ガードマンが銃を持っているところがあったように記憶している。
 しかし崎山さんは25年前、現金を使う必要もあまりなかった彼らの暮らしを大きく変えるようなことはしなかった。そのままの暮らすことを容認し、欠けていた教育や医療というニーズを少しずつ満たすようにした。そうしながら少しずつ押し寄せてくる近代化に飲み込まれてしまわないようにすることも考えながら対処してきた。
 これは口で言うほどたやすいことではない。小学校2年までしか受けられなかった島内の小学校をまず6年制にし、優秀な子には奨学金を出して島外のハイスクールにも行かせるようにした。そしてさらに大学まで行く生徒も出ているとのことだが、中には高い教育を受けさせた結果、島のこれまでの生活がいやになってしまうな子供も出ているという。
 日本には都会に憧れて田舎から出て行く子供はいくらでもいる。海で小魚や貝を自分たちが食べる分とトウモロコシとの交換に必要なだけ捕っていて、お金がほとんど不要な暮らしをしていたが、今では少しずつお金もになってきているそうだ。近代化の波は避けられない。その中でカオハガンの自然と暮らしをできるかぎり守っていくのは大変なことのように思える。

 十数年ぶりにの崎山さんはお元気で、講演会はしっかりつとめられた。しかしだいぶお年を召したように見えた。現在81歳だというから、島でお会いした2001年には65歳ぐらいで今の私より若かった。わたしに老けて見えるのも無理はないと許してもらおう。
 島には住み続けるけれど今年の6月の誕生日には細かい実務からは引退して、今も手伝ってくれている若者たちに後はまかせるそうだ。この先どうなっていくのか、機会があったらまた訪れたいとは思っているが、はたしてかなうかどうか、心もとない。

 

 

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