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2017年4月 3日 (月)

森友サーカス

 3月23日(木)は森友学園の籠池理事長の国会証人喚問テレビ中継をずっと見ていた。午前10時からの参議院での喚問を見て、あんまり面白いので午後からの予定を変更して、午後3時からの衆議院での喚問も見た。そのあと余韻を求めて、夜はインターネットのアーカイブで外国人特派員協会での記者会見まで見てしまった。
 古代ローマでは、権力者が市民に「パンとサーカス(見世物)」を提供することで政治の安定をはかったというが、現代日本では国会でサーカスをやっていて、政治が少しばかり不安定になってきた。

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 何がそんなに面白かったのかというと、まず第一に右派(具体的には政権与党+維新)と左派(民進党ほかの野党)の籠池理事に対する立場がそれまでと逆転していたことがあげられる。
 2月上旬に森友学園への国有地払い下げ価格が異常に安かったことが判明した当初は、権力批判につながってしまうからか、大手メディアはなかなか取り上げようとしなかった。しかし幼稚園では特異な愛国教育を行っている、小学校開設の認可過程にも問題がある、理事長は印象的なキャラクターの持ち主であることなどが少しずつ明らかになり、これは視聴率が稼げる、みんなで渡れば怖くないと連日連夜各社から報道されるにいたった。
 ここまでは、右派は森友学園・籠池理事長をかばう姿勢で、教育勅語に問題はない、払い下げは適正に行われた、小学校認可も問題ないという立場だった。それに対し左派は、払い下げ価格や小学校認可手続きにおおいに疑義がある、学園の教育内容にも問題があり、籠池理事長は怪しげな人物であるという立場だった。
 それが23日の喚問では、右派が籠池理事長はインチキだ、詐欺師だと徹底的に叩く方にまわり、左派は、籠池理事長を壊れ物でも扱うように、理事長も大変ですけどがんばって、この際なにかしゃべってくださいね、と教育内容などにはいっさい触れることなくすり寄っていた。双方ともあきれるくらい見事なてのひら返しだった。
 第二に喚問の登場人物にそれぞれにキャラクターがたっていて、見ごたえがあった。
 最初に出てきた自民党議員は大声で理事長を恫喝。安倍さんこんなに叩いてますよ、と見てもらいたいのか。これまで思想的には同志だったんじゃないかと思うのにこんなに居丈高だと、逆に理事長がかわいそうな気がしてくる。
 警察官僚出身だという自民党議員は、ねちねちという感じで責め立てて理事長に「たたみかけて失礼だ」と言わしめた。テレビドラマ「相棒」に出てくる、主人公杉下右京をなんとか排除しようとたくらむキャリア官僚たちを彷彿とさせ、あれはリアリズムだったのかと思わず手をうった。
 維新の議員は恫喝しながら「大阪府知事がはしごをかけてあげたのに、あんたが自分ではしごから落ちたんじゃないか」と、気のきいたことを言ったつもりで、ついついはしごをかけてあげたと言ってしまったのは道化のようなものか。
  理事長の、小学校の申請書類に書類に間違いがあったのなら、受付時に言ってくれればこんなことにはならなかったのに、というのは完全な逆恨みだから維新が怒るのも無理はない。
 他の党が理事長が教員免許を持っていないことを非難していたが、そういえば、免許のない民間人校長がいろいろ問題を起こしたのは維新の大阪だった。人を見る目がないのではないか。
 キャラ不足だったのは民進党。いかにも頼りなく、理事長の機嫌を損じないように、思想や教育内容などには触れもせず、おそるおそる誰かの名前を出してくれないかと聞いていた。証拠になりそうなFAXの話が出てくると、ほんとにこれ出していいですかと大慌て。こんな頼りないキャラではとても政権はとれそうにない。
 主役の籠池理事長は、午前午後の長時間の緊張をしいられる質問に耐えて、おじず臆せず堂々としていた。タフである。怪しい三種類の契約書の話は「刑事刑事訴追の恐れ」で逃れながら、そのほかの質問にはひとつずつ明確に答えていた。
 たまに国会中継のテレビを見ると、質問はまず自分のアピールが中心で、答弁ははぐらかしばかりとちっともかみ合っていない。国会の質問・答弁もこれくらいちゃんとやったらどうかと思うくらいだった。
 契約書の他にも経歴や推薦入学枠の話とか、どう考えても怪しげな人なのだが、それがいつのまにか国家権力に素手で雄々しく立ち向かう個人みたいな立場に立ってしまっている。うまいというか、タフというか、主役にふさわしい怪人物だ。
 それに質問のあちこちには、首相夫人という、いまだ表舞台に登場しないヒロインの姿が見え隠れして、続編での登場が期待されるという筋立てにもなっていた。記憶のあやしい防衛相という露払いもいたし、豪華絢爛である。

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 国有地の払い下げや教育行政が縁故でねじ曲げられているのではないかという主題はきわめてわかりやすい。お代官様と越後屋の「おぬしもワルよのう」という話と同じである。それに首相夫人という彩りまで添えられている。これで盛り上がらないわけがない。
 もっと大事なことがいくらもある。国会もマスコミもいつまでもこんな下世話なつまらないことにかまけているんじゃない、という識者の意見もあるようだ。たしかに北朝鮮のミサイルだ、安保法制だという話に比べれば、一小学校の認可云々(うんぬん)ははるかに小さい。
 しかし一国の行政が、「私人」であるという首相夫人の「私的な」意向で動いてしまうことを、そのまま見過ごしておくわけにはいかない。国民が政治家や官僚に権力を委ねているのは、彼らが恣意的にその権力を行使することはない、してはならないと考えられているからである。「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。」(日本国憲法第15条2項)――その前提が崩れてしまうな話は、きちんと究明されなければならない。でなければ安保など難しい問題を委託することはできない。
 たたただ下世話でスキャンダラスだから、みんなが喜んで騒いでいるだけではない。基本にそういう問題があるからこそ、これだけの事件になっているのだ。
 というのはおもしろがって予定をさぼってまでずっとテレビを見ていた自分への弁解でもあるが、奥方様のお声がかりひとつで御政道がゆがめられてしまうような世の中は、黄門様だってよしとはしないだろう。

 

 

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