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2017年5月15日 (月)

JB50 悪魔の辞典

 この本は、ラ・ロシュフーコーの『箴言集』やフロベールの『紋切型辞典』などの同類で、それらをさらに皮肉かつ攻撃的にしたような本である。
 これをジョーク本の範疇に入れるのは無理かもしれない。しかし、「○○悪魔の辞典」などと銘打った辞書パロディ本があれこれ出ているので、それらの嚆矢としてリストに入れておくことにした。
 ただし、この本が刊行されたのは1911年で、当時のアメリカ社会や著者の経歴などをよく知らないと、どこがおもしろいのかよくわからない項目が多い。さらに英語のしゃれらしいものもさっぱりわからない。
 英文学者や作家による何種類もの訳が出ているが、どれを読んでも浅学非才のわたしにはやっぱりわからない部分が多い。従って紹介するだけで各書についてのコメントは控える。

 原書としてはビアズ全集に収録された”The Devil`s Dictionary"(1911)と、死後、アリゾナ大学のアーネスト・ホプキンズ教授が全集版に収録されなかった項目を雑紙等から採集して追加した増補版"The Enlarged Devil`s Dictionary"(1967)"の二種類がある。

189 新編 悪魔の辞典

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    (書名)  新編 悪魔の辞典
      (著者)   A・ビアス
                       西川正身 訳
      (出版者) 岩波書店
      (形状)    四六判
      (頁数)    282
      (出版年)  1983/05/16
            1983/09/05、13刷

・西川正身が『悪魔の辞典』の最初の翻訳者(1964、岩波書店、全集版抄訳)。これは全集版にホプキンズ版も加えての抄訳。岩波文庫版も出ている。

・原語のアルファベット順ではなく訳語の五十音順になっている。

辞書 (dictionary n.) ある一つの言語の自由な成長を妨げ、その言語を弾力のない固定したものにしようとて案出された、悪意にみちた文筆関係の仕組み。とはいうものの、本辞典に限り、きわめて有用な製作物である。(p87)

 

190 悪魔の辞典

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    (書名)  悪魔の辞典
      (著者)   A・ビアス
                       奥田俊介、倉本護、猪狩博 訳
      (出版者) 角川書店
      (形状)     文庫
      (頁数)    448
      (出版年)  1975/04/10
            2010/02/20、47版

・奥田俊介、倉本護、猪狩博は1972年訳『悪魔の辞典』(創土社)を刊行し、この文庫の解説には「完訳」と記してある(未見)。この本は完訳ではなく一部省略があるとのこと。

MAGNET,n 【磁石】 磁力の影響を受けるもの。

MAGNETISM,n 【磁力】 磁石に影響を与えるもの。
 前述したばかりのこの二つの定義は千人ものすぐれた科学者の仕事からの要約である。彼らは、偉大な白色の光をもって、この問題を明らかにし、言語を絶するほどに人間の知識を進歩させたのである。(p234)

・日本語の辞書にも上記のような定義づけの堂々めぐりはままある。

 

191 新撰・新訳 悪魔の辞典

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    (書名)  新撰・新訳 悪魔の辞典
      (著者)   A・ビアス
                       奥田俊介 訳
      (出版者) 講談社
      (形状)    四六判ソフトカバー
      (頁数)    254
      (出版年)  2000/11/15
          

・190の訳者である奥田が、読みやすくて明解な「悪魔の辞典」とするため、項目を選び訳を改めたもの。

・横書きで、ところどころ挿絵も入っている。訳文は他と比べてかなりくだけている。

PRESIDENT [名] 大統領
 一時しのぎのおかしら。ぶんどり品を山分けするため、追いはぎ政治屋一味の黒幕どもから選ばれる。 (p198)

PRIEST [名] 聖職者、僧
 天国への道の内側走路を自分のものだと主張し、その走路に通行税を課したいと願っているジェントルマン。(p199)

 

192 正・続全訳 悪魔の辞典

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    (書名)  正・続全訳 悪魔の辞典
      (著者)  アンブローズ・ビアス
                       郡司利男 訳
      (出版者) こびあん書房
      (形状)    四六判・函
      (頁数)    723
      (出版年)  1982/02/20
           1882/05/15、3刷

・郡司利男が最初に全集版『悪魔の辞典』を対訳・注解したのは1974年。ホプキンズ版に追加された項目だけを訳した者が『続・悪魔の辞典』1977年。
 これを合わせて「英語が邪魔になる人」のために縦組にし、手を入れたものがこの本。
 正・続は混在させず、別章になっている。

会話[名] できのよくない頭の、中身を陳列し合う共進会。出品者は、お互いに、自分の商品の配列に夢中で、隣人の陳列した商品を、認める余裕がもてずにいる。(p59)

 

193 筒井版 悪魔の辞典

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    (書名)  筒井版 悪魔の辞典
      (著者)   アンブローズ・ビアス
                       筒井康隆 訳
      (出版者) 講談社
      (形状)    四六判
      (頁数)    491
      (出版年)  2002/10/08
           

・作家筒井康隆による訳本。これまでの訳書が読んでいまいちおもしろくない不満を、日本語を工夫することでなんとかしようと手がけたものだという。

・残念ながら筒井オリジナルの『乱調文学大辞典』のようなおもしろさはない。

ESOTERIC【秘教的な】 形 まことに難解、そして完璧に秘密にされた。古代哲学には二種類あった。「公開的哲学」は、哲学者自身も少しは理解できたもの。「秘教的哲学」は、誰にも理解できなかったもの。現代思想にたいへん深い影響をあたえ、今日広く受け入れられているのは後者である。(p114)

 

 

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