ジョークの本

2017年6月15日 (木)

JB54 韓国・朝鮮ジョーク集2

 最近、ジョーク本のコレクターという奇特な方から蔵書を譲り受けた。初見の本も多々あって、このジョーク本のリストは当分完結しそうにない。
 今回はJB13 韓国・朝鮮ジョーク集の追加分。

201 韓国風流小ばなし

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    (書名)  韓国風流小ばなし
           初期李朝艶笑譚
      (著者)   若松 實 編訳
      (出版者) 風媒社
      (形状)    四六判
      (頁数)    261
      (出版年) 1985/07/25

・李朝世宗期(1470~1494)の説話集『太平閑話滑稽傳』などから短い話を任意に166話選んだもの。

53『韓国ジョークの世界』と同じく、話にひねりや落ちがない、ストレートな下ネタばなしが多い。

 

下僕代わって科挙に赴く
 ある田舎の士人、科挙が行なわれる年となり、都へ行くことで頭を悩ましていた。
 下僕が士人に、
 「旦那様には、なにをそんなに心配しておられますか?」
 「貧乏両班(やんぱん)が、またもや科挙の試験が迫ってきたので心配をせぬわけにもいかぬのだ」
 「いつも旦那様が科挙の試験のためにお出かけになると、馬や下僕の経費なども少なくなく、乏しい家計ではとうていまかないきれませんから、今年の科挙の試験にはわたくしが代わっていけば、試験の用紙代と旅費がいるだけで、その他のむだな費用を減らすことができます」
 「おまえにどうして両班のすることができるのか?」
と言ってしかりつけると、
 「答案用紙を橋の下に捨てるくらいのことは、わたくしにだってできるんじゃないんですか?」(p160)

 

うそつき
 ある男、よりどころのないうわさ話をよくするので、世間の人はうそつきと喚んでいた。このうそつきが両班の家の前を通り過ぎたとき、両班が男を呼び止めて、
 「おまえはいまここでうそを一つついてみよ」
 「わたくしはいま行かねばならぬところがあって、忙しいので受け答えいたしかねます」
 「忙しくて行かねばならぬとは、いったいなんなのか」
 「ただいま役所で米を貸してくださるそうなので行く途中です」
 両班はすぐさま家の中にはいり、下男に袋を持たせて役所へやると、もともと米を貸すというおふれなどはなかった。
 日が暮れてから、その下男は手ぶらで帰ってきたので、両班はその男を呼んで責めたてると、
 「両班のお言いつけの中に、うそを一つついてみよ、とおっしゃったので、おことばどおりにいたしました」(p161)

 

正直な盗人
 盗賊の群れが隠れ家に集まって、盗んできた物を並べて山分けしていたとき、その中の一つの物が、にわかにありかがわからなくなってしまった。皆は疑いいぶかり、
 「われらの中には、心根のよからぬ者はおらぬはずだが」(p172)

番外 緊急手配 笑わせる金正日

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    (書名)  緊急手配 笑わせる金正日
    (著者)  クァク・デジュン、シン・ジュヒョン
             李金宣 訳
      (出版者) 英知出版
      (形状)    四六判ソフトカバー
      (頁数)   239
      (出版年) 2005/09/22

・タイトルといい、表紙といいてっきりジョーク本だと思ったが違った。
 前書きによれば、韓国の北朝鮮民主化ネットワークというところの月刊誌に連載されたものをまとめたものだという。
 金正日のやっていることを告発して、からかって笑おうという趣旨の本。しかし、北朝鮮で新聞を棄てる場合には首領様の写真は切り取ってきちんと保管しないといけない。もし背くと収容所行きになる、というような話は、そうそう笑ってばかりもいられない。

・日本語訳がおかしい。こなれていないだけでなく、役職名など日本語にはない言葉で訳してあって、よくわからないところがある。

 引用できるジョークがないので、代わりに巻頭にあったマンガを挙げておく。

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 金正男氏がでてきた。この本には金正恩の名前は出てこない。この頃はまだよく知られていなかったのか。

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2017年5月29日 (月)

JB53 筒井康隆の辞典

 筒井康隆版悪魔の辞典。これはおもしろいに決まっている。わたしは若い頃から筒井のファンである。


198 欠陥大百科

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    (書名)  欠陥大百科
      (著者)   筒井康隆
      (出版者) 河出書房新社
      (形状)    四六判
      (頁数)    239
      (出版年) 1970/05/10

・これは辞書仕立てになっているが、雑文集のような内容になっている。ことばの定義で遊ぶ短い項目より、ショートショートや、エッセイのような長い項目の方が多い。あちこちに書いたエッセイなどを辞書の形式にまとめたものか。

・筒井自身のマンガ「90年安保の全学連」と「筒井順慶」も収録。小さめの活字二段組で読み応えがある。

・この本はなぜか筒井康隆全集に収録されておらず、文庫にもなっていないようだ。最近「筒井康隆コレクション」(出版芸術社、2015)に収録された。

・「筒井康隆コレクション」の著者による後記にはこう書かれている。
「「欠陥大百科」のほぼ中心になっているのは週刊誌「平凡パンチ」にあちこち取材して連載したアングラ社会学講座の諸項目である。そのほか週刊誌や雑誌に書いたものを小説エッセイの区別なく掻き集めて一冊にした。タイトルを大百科としたのも、本を出したい編集者と余力のない小生が考えた苦肉の一策であった。」(p592)

 

いちもんいっとう<一問一答>
 世界でいちばん短い怪談。
A「幽霊なんて、いるものか」
B「そうかね。ひひひひひひ」
 そういってBが、どろんと消えた。
      ○
 このまねをして、ある人が世界でいちばん短い推理小説を作った。
A「君が犯人だ」
B「そうだ。わたしが犯人だ」
      ○
 つまらないことおびただしい。こんなものなら誰だって作れる。たとえば世界でいちばん短いSF。
A「君は誰だ」
B「わたしは宇宙人だ」
 世界でいちばん短い一問一答。
A「や」
B「や」
(P15)

 

かみ<紙・髪・神>
 汚した場合、罰を受ける恐れがあるから、ヘア・シャンプーで洗ったり賽銭をやったりすればよいが、日本国中どこにでもあるものだから、さほど気にする必要はない。ただしよく燃えるから火事に注意すること。(P54)

 

セミ・ドキュメント
 セミの一生を記録した映画。(p138)
 

199 乱調文学大辞典

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    (書名)  乱調文学大辞典
      (著者)   筒井康隆
      (出版者) 講談社
      (形状)    四六判
      (頁数)    187
      (出版年) 1972/01/28

・これはちゃんと文学辞典の形式をとったパロディ集である。

・この時代に流行った作家とか芸能人などを茶化した部分は若い人にはわからないだろう。時代の先端を行く「笑い」はすぐ風化してしまう。

・巻末付録と銘打った「あなたも流行作家になれる」が半分ぐらいの分量がある。これもまともな案内ではなくパロディだけれど、冗談の中に作家としての本音も垣間見えておもしろい。

げんじょうふざいしょうめい[現状不在証明] アリバイのことで、推理小説に於ては最も犯人に間違われやすい人物が、必ず持っていないもの。(P38)

ござんぶんがく[五山文学] 山田風太郎、山口瞳、山手樹一郎、山崎豊子、山岡荘八の五作家の作品の総称。作品、作風において共通するものや関連性は何もない。(p41)

さんしろう[三四郎] 夏目漱石作。九州から上京した小川三四郎の姿三四郎となるまでの柔道に賭けた青春を描く。(p45)

ならやまぶしこう[楢山節考] 未来における最大の問題、老人問題の解決方法を暗示した傑作。(p72)

はいかい[俳諧・誹諧・徘徊] 俳句をつくろうとして歩きまわること。(p76)

モンテスキュー オバキューと同じく、バーベキューの一種。(p94)

 

199.1 乱調文学大辞典(文庫版)

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    (書名)  乱調文学大辞典
      (著者)   筒井康隆
      (出版者) 講談社
      (形状)    文庫版
      (頁数)    195
      (出版年) 1975/12/15
           1982/11/30、19刷

・199の文庫版。吉行淳之介が解説を書いている。

200 現代語裏辞典

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    (書名)  現代語裏辞典
      (著者)   筒井康隆
      (出版者) 文藝春秋
      (形状)    四六判、函
      (頁数)    445
      (出版年) 2010/07/30

・一項目が非常に短い。長くても三行程度。だから帯にあるように「驚異の12,000項目」になるのだろう。

・インターネットの会議室に読者から寄せられた着想による項目が約2,200項目あるそうだ。

 

あおにさい【青二才】 まだ人を噛んだことがない、二才になった青大将。(p007)

きだみのる 一つの小説に、差別語とされるものがふたつも含まれる題名をつけた作家。(p054)

しゅうごうてきむいしき【集合的無意識】 すべてを歴史と民族のせいにした考え方。(p140)

タレント【talent】 最近ではドラマに出る「俳優」と区別して、バラエティ番組だけの出演者を「タレント」と言っている。もちろん何のタレント(才能)もない。(p211)

ちょうとうは【超党派】 それぞれの党にとってさし障りのないことのみを議論すること。(p224)

ぶしゅ【ぶしゅ】 おかんむり、あきまへん、よだれ、みがまえ、ひんにょう、であいがしら、などはない。(p339)

みんしゅしゅぎ【民主主義】 現在の日本は民主政治ではなく世襲政治。封建制復活か?(p386)

むいしき【無意識】 フロイト考案の、悪事の言いわけ。(p386)

 

 

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2017年5月25日 (木)

JB52 悪魔の辞典番外

 以下の二冊は「悪魔の辞典」と銘打っているが、ひねったな定義で笑わせようというつもりがない。紹介だけするが、マジメな本なのでジョーク本のリストには入れず、番外とする。

番外 中国「悪魔の辞典

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    (書名) 中国「悪魔の辞典」
      (著者)   石 平(せき へい)
      (出版者) 小学館
      (形状)    四六判ソフトカバー
      (頁数)    223
      (出版年)  2008/08/04
           

・石平は、日中問題・中国問題評論家としてマスコミでも活躍中。日本に帰化している。
帯の「我、敢えて”漢奸”とならん!」という言葉は重い――そう言われているのでしょうが…

漢奸
漢民族から「漢奸」だと罵倒されることは、すなわち全人格を否定されることを意味する。中国の歴史上、国のことを思って対話と平和を主張した人ほど漢奸扱いされる危険性がある。
今の中国では、普通の良識と理性の持ち主が「漢奸」とされてしまうのだから、逆に「漢奸」でない人々こそ、普通の良識と理性を欠いているのではないだろうか。(p21)

・書かれているのは中国政府に対する直接的な批判。「笑い」ではなく「嗤い」に近い。

中華思想
漢民族が、世界中で自分たちが一番偉くて正しい、と思い込むために作られた思想的根拠。
このような思想の持ち主たちは、自分の過ちを絶対認めないことを不動の信条とする。(p39)

幹部
ウソをつくときも顔色一つ変えない異質な人種。
自らの責任を絶対認めないことを信条とする人々のグループ。(p80)

・上記を読むと、最近の日本も同じようなことになっているのではないかと心配になる。

 

番外 悪魔の用語辞典

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    (書名)  悪魔の用語辞典
          これだけ知ればあなたも知識人
      (著者)  副島隆彦、SNSI副島国家戦略研究所
      (出版者) KKベストセラーズ
      (形状)    四六判ソフトカバー
      (頁数)    295
      (出版年)  2009/12/25
           

・著者は悪魔主義者とは、ものごとは表面からだけでなく裏側から見てこそ正確にとらえることができるという立場の人々のことであると言う。そして現代日本の諸問題をその悪魔主義的観点から見たのがこの本だという。「悪魔主義者」というのはちょっと大仰に過ぎる。

【税金】 tax
――税金とは国家の悪そのものである
 人間および商売、財産、所得、商品、取引等から、国家が強制的に徴収する、国家財政への貢献金のこと。(p96)

・上記の項目はこれで終わりではなく、この説明が10頁わたって続く。そうだそうだとは思うけれど、笑いはない。

【官僚組織】 bureaucracy
――なぜ彼らは責任を負わないのか
 中央政府の行政管理者集団のこと。(選挙で選ばれていないため)有権者に対して責任を負わない人々である。

・ 最近の国会での官僚の答弁を見ると、これもそうだそうだと思う。説明によれば、対応方法は、官僚のもつ権力を大幅に引き下げるか、官僚個人に賠償責任を負わせるかだというが、それがどのようにして可能か?

 

 

 

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2017年5月22日 (月)

JB51 悪魔の辞典2

 ビアスの『悪魔の辞典』にならった辞書形式のパロディ本はたくさんある。そのうち「悪魔」と名乗っている本を紹介する。この他にもたくさんあると思う。

194 噴飯 惡魔の辭典

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    (書名)  噴飯 惡魔の辭典
      (著者)  安野光雅、なだいなだ、日高敏隆、
                       別役実、横田順彌

      (出版者) 平凡社
      (形状)    115×170mm ソフトカバー
      (頁数)    314
      (出版年)  1986/05/15
            1987/09/17、7刷

・平凡社の雑紙「アニマ」に連載された「競作・惡魔の辭典」に加筆されたもの。
 五人の筆者が同じ項目について、他の筆者の原稿を見ることなく書いたものという。
 五人それぞれの書きぶりでおもしろい。しかしさすがに五人揃ってこれはうまいと感心させられるところまではいかない。

アカデミズム】 academism
学問・芸術を登山にたとえれば、その道は完成し、頂上は極められ、その方法の規範は成立を見たのであるから、今後登山を試みるものは、先人の苦労を追体験することで充分であり、それ以外の試みは、無駄であるばかりか、危険で、有害でさえあると定める、有難い考え方。(A

いわゆる大学らしさのもろもろのことだが、一番それらしいのはなんといっても、やさしいことをわざわざ難しく言う、この世界での習慣である。また、仲間の足を引っ張り、学生をいじめることに快感を覚えるのは、この世界に棲むものの常識であり、文部省から金をぶんどってくる能力を高く評価することも同様である。(N)

売れそうもない本を誉めるときのことば。(H)

学問・芸術を志す人間が、当初「そうなることだけは避けよう」と心掛けながら、いつの間にかそうなってしまっている境地のことであり、そうなったらそうなったで、そうでないものの方が間違っているように思える境地のことである。(B)

たとえば、卒業論文などで、「各人種間に於ける排泄物の分析及び比較研究に見る人類進化の歴史とその未来」というタイトルがついていれば、なんの疑問もはさまず教授は受け付けるが、全く内容は同じでも「大小便こぼれ話」というタイトルでは、頭から受け付けてくれないような傾向のこと。(Y)(p12)

 

195 当世悪魔の辞典

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    (書名)  当世悪魔の辞典
      (著者)  別役実
      (出版者) 朝日新聞社
      (形状)   文庫
      (頁数)    282
      (出版年)  1995/12/01

・劇作家別役実単独の悪魔の辞典。「194 噴飯 惡魔の辭典」に収録された別役記述の項目も含まれている。

【ゲリラ】gurrrilla
語源は下痢の複数形。正規のものではなく、神出鬼没であり、時と所を構わず出たがる傾向にある。そして、誰もこれを防ぐことは出来ない。(p65)

【養老院】ようろういん
かつて人々は、老人をかついでわざわざ山の中に捨てにいった。しかし現在、人々は、敬老の精神を失ってその労すら惜しみ、しかたがないので最近の老人たちは、自分で歩いて、自分で買った養老院に入る。(p293)

 

  

196 悪魔のささやき医学辞典

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    (書名)  悪魔のささやき医学辞典
      (著者)   稲田栄一、LiSA編集部 編
      (出版者) メディカル・サイエンス・インターナショナル
      (形状)    新書
      (頁数)    148
      (出版年)  1996/04/01
            1998/03/13、4刷

・凡例にはA.ビアス二世の『悪魔の医学辞典』の部分訳と書いてあるがもちろん嘘。「LiSA(Life Support and Anesthesia)」という麻酔を核とした総合誌LiSA(リサ)に連載されたもの。麻酔関係の総合誌というのも世の中にはあるんですね。雑紙現物を見たことはありません。

・従って麻酔関係の医学用語ものが多い。従って仲間うちで受けるだろうと思われる内容が多いのもやむをえない。

ますいかい【麻酔科医anesthesiologist, anethetist
手術室では普段「縁の下の力持ち」などとおだてられているものの、手術の成功は外科医の腕であり、失敗は麻酔のせいにされるという、損な役回り。
 人を相手にするとはいえ、感覚脱失状態の人間とさまざまなモニター類を介して接することから、生身の人間よりもコンピュータを愛する傾向がある。それではいけないということで、ペイン外来で感覚のある患者と接するようにしたものの、ひとたびコンピュータを最良の伴侶と考えるようになった麻酔科医には不評をかっている。ちなみに”医師の結婚したい女性の会”の統計によると、男性麻酔科医の85%が不感症の女性を好む傾向があるという。 (-121)

ますいじこ【麻酔事故】 anesthetic accident
麻酔科医が、マスコミや小説の中で活躍することのできる唯一の設定。(p122) 

 

197 続悪魔のささやき医学辞典

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    (書名)  続悪魔のささやき医学辞典
      (著者)   稲田栄一、LiSA編集部 編
      (出版者) メディカル・サイエンス・インターナショナル
      (形状)    新書
      (頁数)    194
      (出版年)  1997/11/25

196悪魔のささやき医学辞典の続編。

・仲間うちの冗談はどうしてもブラック化、自虐化していく傾向にある。

げかい【外科医】 surgeon
手術患者の運命を決める医者。「人はいいが腕の悪い外科医」と「人は悪いが腕のいい外科医」、「手術時間は短いが出血量が多い外科医」と「手術時間は長いが出血量は少ない外科医」など、患者・麻酔科医にとって究極の選択を迫られる場合が多い。(p49)

ポンピング【手動急速注入】 pumping
「外科医への怒り」「絶え間ない吸引音への恨み」「残された輸血単位数への不安」「血液センターからの距離と時間がもたらす焦り」「ようやく下がらなくなった血圧とヘマトクリット値への希望」「終わらなかった手術はない、という信条に支えられた忍耐」「睡魔が訪れる隙もない肉体的精神的な緊張と疲労」…などとともに行われる、時に孤独な祈り。(p154)

 

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2017年5月15日 (月)

JB50 悪魔の辞典

 この本は、ラ・ロシュフーコーの『箴言集』やフロベールの『紋切型辞典』などの同類で、それらをさらに皮肉かつ攻撃的にしたような本である。
 これをジョーク本の範疇に入れるのは無理かもしれない。しかし、「○○悪魔の辞典」などと銘打った辞書パロディ本があれこれ出ているので、それらの嚆矢としてリストに入れておくことにした。
 ただし、この本が刊行されたのは1911年で、当時のアメリカ社会や著者の経歴などをよく知らないと、どこがおもしろいのかよくわからない項目が多い。さらに英語のしゃれらしいものもさっぱりわからない。
 英文学者や作家による何種類もの訳が出ているが、どれを読んでも浅学非才のわたしにはやっぱりわからない部分が多い。従って紹介するだけで各書についてのコメントは控える。

 原書としてはビアズ全集に収録された”The Devil`s Dictionary"(1911)と、死後、アリゾナ大学のアーネスト・ホプキンズ教授が全集版に収録されなかった項目を雑紙等から採集して追加した増補版"The Enlarged Devil`s Dictionary"(1967)"の二種類がある。

189 新編 悪魔の辞典

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    (書名)  新編 悪魔の辞典
      (著者)   A・ビアス
                       西川正身 訳
      (出版者) 岩波書店
      (形状)    四六判
      (頁数)    282
      (出版年)  1983/05/16
            1983/09/05、13刷

・西川正身が『悪魔の辞典』の最初の翻訳者(1964、岩波書店、全集版抄訳)。これは全集版にホプキンズ版も加えての抄訳。岩波文庫版も出ている。

・原語のアルファベット順ではなく訳語の五十音順になっている。

辞書 (dictionary n.) ある一つの言語の自由な成長を妨げ、その言語を弾力のない固定したものにしようとて案出された、悪意にみちた文筆関係の仕組み。とはいうものの、本辞典に限り、きわめて有用な製作物である。(p87)

 

190 悪魔の辞典

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    (書名)  悪魔の辞典
      (著者)   A・ビアス
                       奥田俊介、倉本護、猪狩博 訳
      (出版者) 角川書店
      (形状)     文庫
      (頁数)    448
      (出版年)  1975/04/10
            2010/02/20、47版

・奥田俊介、倉本護、猪狩博は1972年訳『悪魔の辞典』(創土社)を刊行し、この文庫の解説には「完訳」と記してある(未見)。この本は完訳ではなく一部省略があるとのこと。

MAGNET,n 【磁石】 磁力の影響を受けるもの。

MAGNETISM,n 【磁力】 磁石に影響を与えるもの。
 前述したばかりのこの二つの定義は千人ものすぐれた科学者の仕事からの要約である。彼らは、偉大な白色の光をもって、この問題を明らかにし、言語を絶するほどに人間の知識を進歩させたのである。(p234)

・日本語の辞書にも上記のような定義づけの堂々めぐりはままある。

 

191 新撰・新訳 悪魔の辞典

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    (書名)  新撰・新訳 悪魔の辞典
      (著者)   A・ビアス
                       奥田俊介 訳
      (出版者) 講談社
      (形状)    四六判ソフトカバー
      (頁数)    254
      (出版年)  2000/11/15
          

・190の訳者である奥田が、読みやすくて明解な「悪魔の辞典」とするため、項目を選び訳を改めたもの。

・横書きで、ところどころ挿絵も入っている。訳文は他と比べてかなりくだけている。

PRESIDENT [名] 大統領
 一時しのぎのおかしら。ぶんどり品を山分けするため、追いはぎ政治屋一味の黒幕どもから選ばれる。 (p198)

PRIEST [名] 聖職者、僧
 天国への道の内側走路を自分のものだと主張し、その走路に通行税を課したいと願っているジェントルマン。(p199)

 

192 正・続全訳 悪魔の辞典

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    (書名)  正・続全訳 悪魔の辞典
      (著者)  アンブローズ・ビアス
                       郡司利男 訳
      (出版者) こびあん書房
      (形状)    四六判・函
      (頁数)    723
      (出版年)  1982/02/20
           1882/05/15、3刷

・郡司利男が最初に全集版『悪魔の辞典』を対訳・注解したのは1974年。ホプキンズ版に追加された項目だけを訳した者が『続・悪魔の辞典』1977年。
 これを合わせて「英語が邪魔になる人」のために縦組にし、手を入れたものがこの本。
 正・続は混在させず、別章になっている。

会話[名] できのよくない頭の、中身を陳列し合う共進会。出品者は、お互いに、自分の商品の配列に夢中で、隣人の陳列した商品を、認める余裕がもてずにいる。(p59)

 

193 筒井版 悪魔の辞典

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    (書名)  筒井版 悪魔の辞典
      (著者)   アンブローズ・ビアス
                       筒井康隆 訳
      (出版者) 講談社
      (形状)    四六判
      (頁数)    491
      (出版年)  2002/10/08
           

・作家筒井康隆による訳本。これまでの訳書が読んでいまいちおもしろくない不満を、日本語を工夫することでなんとかしようと手がけたものだという。

・残念ながら筒井オリジナルの『乱調文学大辞典』のようなおもしろさはない。

ESOTERIC【秘教的な】 形 まことに難解、そして完璧に秘密にされた。古代哲学には二種類あった。「公開的哲学」は、哲学者自身も少しは理解できたもの。「秘教的哲学」は、誰にも理解できなかったもの。現代思想にたいへん深い影響をあたえ、今日広く受け入れられているのは後者である。(p114)

 

 

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2017年5月 1日 (月)

J49 ジョーク集あれこれ3

186 とっておきのいい話

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    (書名)  とっておきのいい話
      (著者)   週刊文春<編>
      (出版者) ネスコ(日本映像出版株式会社)",
      (形状)     新書版ハードカバー
      (頁数)    276
      (出版年)  1986/06/30

・巻末に「本書は『週刊文春』連載のコラム「わたしの好きなジョーク」「とっておきのジョーク」他より抜粋、再構成したものです。」とある。
 作家や漫画家、タレントなど有名人が、自分の好きなジョークを披露するというもの。

・いわゆるジョークにかぎらず、若い頃の思い出話などもあり、バラエティに富んだ、なかなかおもしろいジョーク集になっている。

・青島美幸(青島幸男の長女)が紹介しているジョーク。

 桃太郎さんの話を知っていますか?
 ある日、おじいさんが山に芝刈りに、おばあさんが川に洗濯に行きました。と、川上から大きな桃がドンブラコ、ドンブラコ。家に持ち帰っておじいさんと二人で大きな刀でタテに切ろうとすると、なかなか切れない。
「どうしたんだろう」
 力をふりしぼっても、刀はくい込んだままびくともしない。よく見てみると、なんと桃太郎が中で両手をあわせ、真剣白刃取りをしていたのだった……。(p107)

187 とっておきのいい話(文春文庫)

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    (書名)  とっておきのいい話(文春文庫)
      (著者)   文藝春秋編
      (出版者) 文藝春秋
      (形状)     文庫
      (頁数)    273
      (出版年)  1989/09/10

・巻末に「ネスコ刊「とっておきのいい話」に加筆訂正」とあるが、加筆訂正箇所は未チェック。
 ネスコ刊とは話の順番が違って、話者の五十音順に並べてある。

・声楽家の友竹正則の話から。

「ジョークはそれ自体面白いことも必要だが、相手を考えて言わないと、ちっとも、面白くもおかしくもないことになる。
 帝劇のエレベーターの中で、たまたま一緒に乗り合わせた山田五十鈴さんに、長谷川一夫さんが、
「ベルさん、宮本武蔵には子供がいたか、いなかったか?」
 と問うたところ、山田さんは、
「あら、わたしそれ、知らないわ」
 長谷川さん得意顔で、
「いませんでした」
「あら、どうして」
「ムサシコガネー」
 と、それにベルさん、
「あら、あちらお子さん無かったの。そうねえ、子がいてする苦労もあるから……」
 としんみり。長谷川さんのくさること。

・この本からではないが、同様のネタをもうひとつ。

「大岡昇平が書いた宮本武蔵の奥さんの本は?」
「『武蔵野夫人』」

188 ジョークはきわどく

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    (書名)  ジョークはきわどく
          TALK &TALK THEATER 5
      (著者)   松岡正剛編
      (出版者) エヌ・ティ・ティ・アド
      (形状)     四六判ソフトカバー・函
      (頁数)    199
      (出版年)  1987/07/19

・ジョーク本ではない。副題に”TALK &TALK THEATER 5”とあるように、NTT主催のトークショウで語られた話をまとめたもの。
 この本には、春風亭小朝、森瑤子、なかにし礼三人の回と林真理子、林美一、黒鉄ヒロシ、ロビン・ギルの四人の回の分が収録されている。
 
・トークショウの他に、写真やイラスト、マンガがあれこれ入っているけど、ぎっしりつまっているわけではない。ちょっとしゃれたレイアウトで、いかにもバブルの時代という感じがする。ちょっと懐かしい。松岡正剛が編者だというのも驚きだ。

・巻末には植松黎編の「人類のナイショ話」というジョーク集がついている。当時、植松黎編の角川文庫『ポケット・ジョーク』シリーズがヒットして、合計23冊も刊行された。

・その「「人類のナイショ話」の中に、西洋のジョーク集の鼻祖は15世紀、ローマ法王の私設秘書だった古典学者ポジオ・ブランキオリーニだという記事がある。「リベル・ファクティアルム」というラテン語のダーティ・ジョーク集の著書があるそうだ。
 ジョーク本のコレクターもこのあたりまでいかないと本物ではないということになるのか。道はけわしい。

・「人類のナイショ話」からひとつ。

ストッキング
 女たらしのマイクが、バーで酒を飲んでいるところに、友人のリチャードが入ってきた。
「大金持ちの未亡人との婚約がダメになったんだって?」リチャードがマイクに言った。「あの婆さん、きみにずいぶん入れあげていたみたいじゃないか。何かまずいことでもあったのかい」

「そうなんだ。先週のことさ、ボクらは靴屋に行ったんだ。そこで、ぼくは、彼女のストッキングにシワがよっているのに気がついて注意したんだ」
「それが別れた原因になるのかい?」リチャードがたずねた。
「その日」マイクは、ため息をついて言った。「彼女は素足だったんだ」(p187)

 

 

 

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2017年3月 2日 (木)

JB48 ジョーク集あれこれ2

181 わたしのポケットユーモア集

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    (書名)  わたしのポケットユーモア
          世界おもしろ小話"
      (著者)   H・E・シュタイン 編
      (出版者) 個人出版
      (形状)     新書
      (頁数)    142
      (出版年)  記載なし

・奥付は「個人出版¥940」となっていて、出版社や出版年月日の記載がない。
 ジョークの好きな人が「シュタイン」の名前で出したというかたち。
 刊行年月日がわからないけれど、内容や「ポケット」という題名からすると、角川文庫の「ポケット・ジョーク・シリーズ」が当たった頃、刺激されての企画だったのだろうか。違っていたらごめんなさい。

・内容は、よく見かけるネタが多く、しかも下ネタが多い。

死に場所(仮題)
 ある金持ちが占い師にたづねた
「どうぞ教えてください。私の死に場所を。一生のお願いです」
「妙なことをおたづねですね。重大なことですよ」
「ええ、その通りです。教えてくださったらお礼はいくらでも致します」
「それでどうするんです?」
「決まっているじゃありませんか。私は一生その場へ近づきません」(p5)

 

182 わんぱくジョーク

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    (書名)  わんぱくジョーク
      (著者)   関 楠生 編訳
      (出版者) 河出書房新社
      (形状)     文庫
      (頁数)    194
      (出版年)  1981/08/04

・半分くらいは子供を題材にしたジョークで、カバーには「子どもを主人公にしたホノボノとしたジョークを集めてみた」とある。あとの半分はふつうの大人のジョーク集。

宗教の時間
「よい子のみなさん」と、宗教の先生が尋ねた。
「神さまに私たちの罪を許していただくためには、まず何をしなければいけないでしょうか?」
「まず第一に、罪を犯さなければいけません」(p49)

専用
 ダックスフントがウーウーうなって、おそろしげに歯をむき出した。お客はこわくて、食べつづけられななくなった。
「この犬、どうしたんだろう?」
と、お客が尋ねた。
「あたしも知らないけど」
と、その家の小さい女の子が答えた。
「もしかしたら、自分用のお皿でお客さんが食べているものだから、おこっているのかもしれないわ」)p71)

 

183 ジョーク雑学大百科

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    (書名)  ジョーク雑学大百科
      (著者)   塩田丸男
      (出版者) 新潮社
      (形状)    文庫
      (頁数)    280
      (出版年)  1984/11/25

・これはジョーク本とは言えないが、題に「ジョーク」とあるので挙げておく。
 内容は「下ネタの雑学百科」である。

 

184 大爆笑ネタ772連発

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    (書名)  大爆笑ネタ772連発
          みんなを笑わせるポケット・ジョーク
      (著者)   トナミ・ゲン
      (出版者) 二見書房
      (形状)     文庫
      (頁数)    254
      (出版年) 1999/10/25

・これは『月刊ひざねた』というミニコミ誌に投稿されたお笑いネタを集めたものらしい。詳細はわからない。「ひざねた」というのは「思わずひざを打ちたくなるような、斬新な発想を持つ話のねた」の略だそうだ。

・だからこれもいわゆるジョークとは違うが、なかなかおもしろい。

どんより……
 弟は、国語のテストで「『どんより』を使って短文をつくりなさい」という問題でバツをもらったのを不思議がっていた。答案には。「うどんよりそばが好き」と書いてあった。(p19)

まさか……
 先生の話によると「『まさか……ろう』を使って短文をつくれ」という問題に、「まさかりかついだ金たろう」」と書いた生徒がいたらしい。(p21)

目立たない服
 高校生の弟が「洋服を買いに行く」というと、母は「目立たないのにしておきなさい」といっていた。夕方、弟は迷彩色のシャツを買ってきた。(p183)

 

185 思わず使いたくなる粋なジョークとキメゼリフ

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    (書名)  思わず使いたくなる粋なジョークとキメゼリフ
          ハリウッド映画に学ぶ会話術
      (著者)   トナミ・ゲン
      (出版者) アクタスソリューション
      (形状)     B6変形
      (頁数)    127
      (出版年) 2007/06/27

・これも題に「ジョーク」とあるが、ジョークがない。
 見開きの右側に映画のキメゼリフとイラスト、左側に実際にそのセリフをどう使うかが書いてある。キメゼリフは映画のどういうシーンで使われたのかが書いてないので、いまいちピンとこない。使い方の解説より映画のその場面の説明が欲しかった。

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 今回の後半3冊はジョーク本とはいいにくい本ばかりになってしまった。

 

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2017年2月27日 (月)

JB47 ジョーク集あれこれ1

 これまでジョーク本を少しずつグループに分けて紹介してきたが、グループ分けがうまくできないものがある。「あれこれ」ということで、そういうものも少しずつ紹介していきたい。

178 ショート・ジョークじゃものたりない

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    (書名)  ショート・ジョークじゃものたりない
          キションのストーリー・ジョーク1
      (著者)   E・キション
           原 ゆう 訳
      (出版者) 角川書店
      (形状)     文庫
      (頁数)    212
      (出版年)  1985/05/10

・題名どおり、ジョークというには長い、短い小説のような、おもしろエッセイのようなものを集めてある。

・筒井康隆が帯と巻末に推薦文を書いている。なるほど筒井好みの、シュールで馬鹿馬鹿しい話がある。
 「ナポレオンが降伏したわけ」は、ナポレオンが作戦会議や戦争で忙しいさなかに、そんなことは眼中になく妻はひたすら「片付かないからさっさと食事をすませて!」と言い続けるという話。筒井の作品にありそうだ。
 「ご贈答用原子爆弾はいかが?」は、いとこから原子爆弾が贈られることになって、核軍縮会議に出るのは面倒だとか、こわれたらどこで修理しようかと悩んだりする話。これもシュールで筒井風だが、落ちが「届いたら玩具だった」というのはいただけない。

・作者はハンガリー出身のイスラエル人だという。生活や文化の違いか、わたしにはピンとこなかった。だからこの作者の他の本は手放してしまい、これしか残っていない。

 

179 ジョークの方程式

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    (書名)  ジョークの方程式
          完全無欠なお笑いのサイエンス
      (著者)   ジョーク東郷
      (出版者) 同文書院
      (形状)     B6変形
      (頁数)    207
      (出版年)  1997/03/08

・ジョークの紹介をしながら構造を分析して、さらにジョークの作り方まで教えようということ。 しかし残念ながら肝心の用例がおもしろくない。だから構造だのなんだの言われてもさっぱりアタマに入らないし、納得もいかない。
 だから引用なし。

180 もし世界が80問のジョークだったら

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    (書名)  もし世界が80問のジョークだったら
          アタマのこりをほぐす笑いの泉
      (著者)  竹村健一、田澤拓也
      (出版者) 太陽企画出版
      (形状)    四六判ソフトカバー
      (頁数)    189
      (出版年)  2002/04/25

・題名から、『世界がもし100人の村だったら』(マガジンハウス、2001)がベストセラーになったので、人気のおこぼれを狙った本だと思われる。

・ジョークの落ちがどうなるかを質問の形にしてある。使われているジョークはいずれもどこかで聞いたことがあるようなものばかり。もとのジョークは4、5行じゃないかと思われるものが、ジョーク1問で見開き2頁にするためにか、やたら長くなっている。そのためか、登場人物を「アメリカの著名ジャーナリスト、ハルバルキターゼ」とか「大泉純二郞首相」と名付けたり、余計な描写がくっつけたりして、かえって興ざめになっている。
 長いので引用なし。
 

 「あれこれ」の一回目は、わたしがあまり感心しなかった本ばかり並べることになってしまった。

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2016年12月 5日 (月)

JB46 少年倶楽部の笑話

 戦前の人気雑誌『少年倶楽部』に掲載された笑話などを収録した本。戦後、わたしの幼少年時代にも「少年クラブ」と改名して存続していた。
 笑話も和歌も、読者からの投稿を選んで掲載したもので、当時の生活が色濃く反映されている。

176 滑稽和歌と笑話集

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(書名) 滑稽和歌と笑話集(こっけいわかとしょうわしゅう)
      少年倶楽部文庫41
(著者)  少年倶楽部編
(出版者) 講談社
(形状)    文庫
(頁数)   156
(出版年) 1976/10/16

・これは1975~1976にかけて講談社から刊行された「少年倶楽部文庫」全42冊のうちの一冊。
 表紙の絵は、昭和12年3月号付録の『傑作笑話集 笑いの爆弾』からとっているが、滑稽和歌も含まれており、この付録をそのまま復刻したものではないようだ。(下記写真は「177 『少年倶楽部』の笑い話」口絵より)

T

・ J50 『滑稽和歌と笑話集』では、この本からとった、本の出てくる笑話・滑稽和歌を紹介した。

・選者の意向によるのだろうけれど、あまりひねったものはない。のどかな、ほのぼのとした感じのものが多い。

・投稿者の住 所には、「朝鮮」や「台北」もあって、これも時代を感じさせる。

片かなの算術(仮題)
一年生の子「お母さん、方かなの算術ってあるんだね?」
お母さん「どうして?」
一年生の子「だってあそこの看板にハ引くモはカだって書いてあるよ」(p54)

T1天下に号令(仮題)
 国史の時間に、
先生「日本で天下に号令した英雄を知っていますか。武雄君」
武雄「はい、豊臣秀吉と徳川家康です」
先生「よろしい、そのほかに?」
一郎「はい!」
先生「一郎君」
一郎「ラジオ体操のアナウンサーです」(p143)

 

滑稽和歌いくつか

喧嘩したあとのさびしさただひとり石ころけりつつ帰り行くなり(p8)

先生はぼくできる時ぼくささずぼくできぬ時ぼくをさすかな(p47)

遊ぶ時狭いと思う運動場掃除の時は広すぎるなり(p59)

世の中は清(す)むと濁るの違いにて墓に香あり馬鹿に甲なし(p84)

 

177 のどかで懐かしい『少年倶楽部』の笑い話

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(書名) のどかで懐かしい『少年倶楽部』の笑い話
(著者)  杉山亮 選・解説
(出版者) 講談社
(形状)    A5判ソフトカバー
(頁数)    269
(出版年) 2004/02/25

・大正3年(1914)から昭和37年(1962)まで48年間続いた少年倶楽部(「少年クラブ」の期間も含む)から、掲載された笑話(しょうわ)を年代別に紹介し、時代ごとに簡単な解説をつけた本。

・最初は読者文芸欄の「一口笑話」として、出された「題」に読者が応募するかたちで始まった。
 この本によれば、大正4年新年号の「お雑煮」の題で一等になったのは次のもの。

 元日の朝、母が五つになる子どもを呼んで
「坊や早くお雑煮を食べて六つにおなりなさい」
「それなら明日も食べて七つになろう」(p46)

 この頃は「数え年」で、正月に老若男女みんな一斉にひとつ歳をとることになっていた。わたしの子どもの頃もまわりの大人はそう言っていた。この笑話では、雑煮を食べ終えることが歳をとるための儀式になっていたようだが、わたしの記憶にはない。「数え年」がすたれつつあったのか、それともその地方によるものか。
 歳の数だけ雑煮の餅を食べるものだとは、わたしの子どもの頃も言われていた。

「お雑煮の餅は年の数だけ食べるものだよ」
「それでは、お雑煮を食べる時だけ、お母さんと、年を取り換えましょうか」(p46) 

 今では、雑煮そのものが廃れつつあるようだ。こういう話は本の題名のように「のどかで懐かしい。

・こんなのもある。

誕生日
テル子『明日は、あたいの誕生日よ。母ちゃんが、さうおつしゃつたわ。』
ミチ子『ほんと。それでは、あたいの誕生日は、いつかしら?』
テル子『ミチ子ちゃんは、三つで、あたいより二年もおそく生まれたんだもの。まだ、なかなかよ。』

 あと2年も待たないと誕生日が来ないのでは、ちょっとかわいそうだが、なんともかわいい。

・時局を反映しているものもある。

將棋をしているおぢいさんが、
『金(きん)があればいゝんだがな――』
それを聞いて、ター坊、
『金なんか、ないよ。政府がみんな買い上げているもの』(p114)

 昭和14年の10月号。この頃、愛国金献運動とか、政府による退蔵金の強制買い上げが行われていた。

砂糖の買ひ方
 砂糖を買ひに行つて、
凸坊『をぢさん、白砂糖一斤ください。』
主人『一斤は賣れないことになつてゐるのです。半斤にしてください。』
凸坊『それでは、半斤のを二つ下さい。』(p148)

 これは昭和14年の12月号。砂糖も統制されていたのだろう。

・時局ではなく時代を感じさせるもの。 

國史
 國史の時間、先生大きな聲でテーブルをたゝきながら、『逆賊北條高時を滅ばしたのは誰ですか。誰か。忘れたのか‥‥吉井君!』
 わき見してゐた吉井君、泣き聲で、
『先生、僕ぢゃありません。』(p67)

『日本の英雄』
先生「日本の英雄を五十人だけ挙げてごらンなさい」
生徒「はい。四十七士と乃木大将、東郷元帥、西郷隆盛です」(p158)

・戦後の、わたしが子どもの頃のものも見ておこう。

原爆まぐろ
太郎「このまぐろのかんづめ新しい?」
店員「へえ、新しまっせ。」
太郎「そしたらやめとこうっと。原爆まぐろだったらかなわんから。」
店員「アジャー」(p222)

 「原爆まぐろ」で第五福竜丸の被爆事件を思い起こす人も少なくなっただろう。当時は子どもの笑い話に出てくるぐらい、まぐろの放射能汚染が騒がれた。

・わたしはずっと少年雑誌の愛読者で、笑い話の欄は大好きだったが、不満だったのは、読んだことがある笑い話が何度も出てくることだった。「少年」にも「少年クラブ」にも「冒険王」にも、まったく同じと言っていい笑い話が、繰り返し何度も載っていた。
 それは、この本の解説の部分にも書いてあるとおり、読者が数年単位で入れ替わるため、編集者も確信犯的に同じ話を載せていたものだろう。
 このブログでも「ジョークの本」の解題みたいなことをやっているけれど、本は違ってもジョークの中身は同工異曲のものが大半、というものが多い。この歳になってようやく、ジョークというのは、他人から聞いた面白い話を次の人に伝えていくものなので、やむをえないことだと理解したが、子どもの頃はちょっと気に入らなかった。
 そのどこにでもあった笑い話のひとつがこれ。

ききちがい
おじいさん「太郎、いま、何時だい。」
太郎「もう、六時だよ。」
おじいさん「なんだとっ。もうろくじじいだとっ。」(p237)

 この笑い話は戦前からずっと続いていたのではないかと思う。しかし現在では祖父母との同居が少なく、「もうろくじい」はほとんど廃語になっているようなので、もう今の子どもたちにはこの笑い話は受け継がれていないだろう。

ザ=ピーナッツ
Aくん「Bくん、ザ=ピーナッツはなにごだかしってるかい。」
Bくん「しってるさ、英語だよ」
Aくん「きみ、頭がわるいなあ、あれはふたごだよ。

 これは昭和37年10月号。子どもに限らず、全国にひろがっていた笑い話である。

 

 

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2016年11月24日 (木)

JB45 英語のジョーク6

174 英語脳はユーモア・センスから

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(書名) 英語脳はユーモア・センスから
(著者)  丸山 孝男
(出版者) KKベストセラーズ
(形状)    新書(ベスト新書)
(頁数)   207
(出版年)2005/03/01

・ 二、三行の短いジョークばかりを集めた本。だから読みやすい。

・酒とかお金とか、テーマ別に分類してある。ちょうどアメリカの大統領選挙が大きな話題になったところなので、まず政治の章から。

 約束の地(仮題)
 America is the Land of Promise -- especially just before election.
 アメリカは約束の地である、とくに選挙の直前は。(p193)

  おとぎ話(仮題)
 Son:    Dad, do all fairy tales begin with "Once upon a time..."
  Father:  No, there are fairy tales that begin with "If I elected I promise ..."
 「お父さん、おとぎ話はみんな『むかし、むかし』ではじまるの」
 「違うよ。『当選したあかつきには、私は約束します』ではじまるおとぎ話もあるんだよ」(p193)

 さてトランプ大統領の公約、メキシコの壁はおとぎ話になるのだろうか。

・これは「違いは違いでもおお違い!」という、”What's the different between”ではじまるジョークを集めた章にあったジョーク。

 三人の大統領(仮題)
 What's the different between George Washington, Bill Clinton, and George Bush?
  Washington couldn't tell a lie, Clinton couldn't tell the truth, and Bush doesn't know the difference.
 「ジョージ・ワシントン、ビル・クリントン、ジョージ・ブッシュの違いはなにか」
 「ワシントンはウソをつくことができなかった。クリントンは真実を話すことができなかった。ブッシュは嘘と真実の違いを理解できない」(p129)

・子供向きのだじゃれ(なぞなぞ)。

 What's the biggest ant in the world?
  An eleph-ant.
  「世界で一番大きなアント(ant)はなにかな」
 「エレファント」(p73)

 What do you call a bee born in May?
  A maybee.
 「5月に生まれたビーをなんと呼ぶのかな」
 「メイビー」(p74)
 

・これはカバーのデザイン違い。(これも2005/03/01初版)

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・この著書の本は、他にJB37 アメリカン・ジョーク156『アメリカの大統領はなぜジョークを言うのか』を紹介している。

 

175 英語のしゃれ

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(書名) 英語のしゃれ
(著者)  広永周三郎
(出版者) 太陽出版
(形状)    四六判ソフトカバー
(頁数)   218
(出版年)1980/09/20

・これは英語のしゃれを含んだジョークばかりを集めた本。だから難しい。語呂合わせやダジャレは、まず音が似通っていることがピンときて、意味内容も一瞬でわからないと笑えない。まず意味を考えて、それからこれはダジャレなんだと理解しているようでは、とても吹き出すことはできない。

・しゃれを5つに分類している。
 1 同じ言葉を二つの意味に使ったしゃれ。
 2 同じ、または似た発音の二つの言葉を使ったしゃれ
 3 縁語を使ったしゃれ
 4 諺、成句、熟語などをもじったしゃれ
 5 リメリック

・それぞれになかなかむずかしい。 例えば1の同じ言葉を二つの意味に使ったしゃれとして、こんな例がある。

首府
Teacher in geography class: "Where is the capital of the United States?"
Smart student: "All over the world."
地理の授業中の先生「米国の capital はどこにありますか。」
賢い生徒「世界中です」(p13)

 capital の「首府」と「資本」の意味をわざと取り違えてあるジョーク。アメリカの資本は世界中に進出しているということだとわかれば、なるほどと思うが、最初読んだ時は、何を言っているのか理解できなかった。

宗教の味
Exploler: "Does your tribe know anything about religion?"
Native: "Well, we had a taste of it when the last missionary was here."
探険家「あなたの部族は宗教というものを知っていますか。」
土人「ええ、前に宣教師が来た時ちょっと味わいました。」(p3)

"have a taste of "には、「ちょっと味わう」の他に「若干の知識を得る」という意味がある。日本語でも、「キリスト教をちょっとかじってみた」と言ったりするから、これはわかった。
 この本は1980年の刊行で、Native を「土人」と訳してある。この頃はこういう「人食い人種ジョーク」がまだたくさんあった。最近はあまり見かけなくなったと思う。

 2の同じ、または似た発音の二つの言葉を使ったしゃれというのは、こんなもの。

ショパン
Sign in a music store: "Gone Chopin--back at two."
楽器店の掲示:「 Gone Chopin――二時に帰ってきます。」

 "Gone shopping とするところ楽器店だから Gone Chopin とシャレた。ダジャレである。これだってダジャレだとわかるまでに時間がかかる。

 3の縁語をつかったしゃれ。

デイトに強い女
A girl can be poor on history but great on dates.
歴史に弱い女の子でも dates に強いことがある。(p160)

 date には「日付」と「デイト」がかけてあって、history と dates は縁語。英語では縁語であることもよくわからない。

 4の 諺、成句、熟語などをもじったしゃれの例。

遺書
Where there is a will, there are dissatisfied relatives.
遺書があると、不満な親戚がある。(p194)

 "Where there is a will, there is a way."
 「精神一到何事かならざらん」をもじったもの。これくらいならわかるが、他の例はほとんどわからなかった。

 5のリメリック(limerick)というのは五行の狂歌詩で、一、二、五行と三、四行の最後の音節が韻を踏むものだそうだ。

神の計画
God's plan had a hopeful beginning,
But man spoiled his chances by sinning.
    We trust that the story
    Will end in God's glory.
But, at present, the other side's winning.
神の計画は希望にみちて始まった。
しかし、人間が罪を犯してその実現をはばんだ。
われわれは話が神の栄光に終ることを信じているが、現在では相手側が勝っている。(p201)

 韻を踏んでいるのはわかるけれど、 とても面白がるところまではいきそうにない。英語のしゃれは難しい。

J46  対訳アメリカのジョークで、同じ著者の『対訳アメリカのジョーク』(太陽出版、1986)からのジョークを引用している。この本もついでに紹介しておこうと思ったら、行方不明で見つからない。出てきたら後日紹介します。

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